ドラッグストアやネット通販で「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」という言葉を見かけて、「名前が似ているけど、何が違うの?」と迷ったことはありませんか。さらに最近は「シンバイオティクス」「ポストバイオティクス」まで登場し、ますますややこしく感じている方も多いと思います。
結論を先にお伝えすると、違いはとてもシンプルです。ざっくり言えば、プロバイオティクスは「体によい生きた菌そのもの」、プレバイオティクスは「その菌のエサ」です。この2つの関係が分かると、腸活の食べ方の軸がはっきりします。
消化器内科医として、外来でもよく聞かれるこの疑問を、公的機関と国際的な専門家会議の定義にもとづいて、やさしく整理します。症状がないうちから腸を整えたい方こそ、ここを押さえておくと迷わなくなります。
プロバイオティクスとプレバイオティクスの違いを一言で

まず全体像を、4つの言葉の関係で整理します。いずれも「腸内細菌を味方につけて健康に役立てる」という同じゴールに向かう仲間ですが、役割が違います。
| 言葉 | 正体(ひとことで) | 身近な例 |
|---|---|---|
| プロバイオティクス | 体によい生きた菌そのもの | ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆などの発酵食品 |
| プレバイオティクス | その菌のエサになる成分 | オリゴ糖・食物繊維の一部 |
| シンバイオティクス | 菌とエサを組み合わせたもの | 「生きた菌+そのエサ」をセットにした食品・サプリ |
| ポストバイオティクス | 菌が作り出した成分や、死んだ菌の成分 | 研究・商品化が進んでいる新しい分野 |
ヒトの腸内にはおよそ1,000種類・100兆個ともいわれる細菌がすんでいて、体によい「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、どちらにも傾く「日和見菌」のバランスが健康と関わっているとされています。善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌を増やすには、オリゴ糖や食物繊維を十分にとることが大切だと、厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」でも解説されています。
厚生労働省の統合医療情報サイト「eJIM」でも、プロバイオティクスは「健康上の利益が得られると考えられている生きた微生物」、プレバイオティクスは「消化されない食品成分」、シンバイオティクスは「両者を合わせたもの」とやさしく説明されています。
つまり、「よい菌(プロバイオティクス)」を入れることと、「よい菌のエサ(プレバイオティクス)」を届けて育てること。この2方向がそろうと、腸内環境はより整いやすくなる、というのが基本の考え方です。
プロバイオティクスとは?──体によい「生きた菌」

プロバイオティクスは、国際的な専門家会議であるISAPP(国際プロバイオティクス・プレバイオティクス学会)によって、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の定義をもとに、「十分な量を摂取したときに、宿主(=私たちの体)に健康上の利益をもたらす、生きた微生物」と整理されています。ポイントは「生きている」ことと「体によい働きが確認されている」ことです。
身近な供給源は、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、ぬか漬け、みそ、キムチといった発酵食品です。これらには生きた菌が含まれています。ヨーグルトに使われる菌にも種類があり、それぞれ報告されている働きが異なります。菌の種類ごとの特徴は、ヨーグルト菌の種類と効果を比較した記事で詳しくまとめています。
ただし、ひとつ知っておいてほしい注意点があります。ISAPPは、「プロバイオティクス」という言葉は正確に使うべきだとしていて、菌の株(タイプ)が特定され、健康への効果が科学的に確認されたものだけが本来この名前にふさわしい、という立場です。言いかえると、発酵食品に菌が入っていても、そのすべてが厳密な意味での「プロバイオティクス」に当てはまるわけではありません。商品を選ぶときは、雰囲気ではなく「どんな菌が、どれくらい入っているか」を見るのがコツです。
【医師の視点/臨床的な考え方】ここは私の考え方です。難しく考えず、「まずは続けられる発酵食品を毎日少しずつ」で十分だと外来ではお伝えしています。高価なサプリに飛びつく前に、ふだんの食事に一品足すところから始めるのが現実的です。医薬部外品の整腸剤と腸活サプリの違いはこちらの記事で整理しています。
プレバイオティクスとは?──菌の「エサ」になる成分

プレバイオティクスは、同じくISAPPによって「宿主の微生物(腸内細菌)に選択的に利用されて、健康上の利益をもたらす基質(成分)」と定義されています。かみくだくと、「よい腸内細菌がエサとして選んで食べ、その結果として体によい効果につながる成分」ということです。2017年の定義では、この考え方は食物繊維以外の成分や、腸以外の場所にも広がりうるとされています。
代表的なのは、オリゴ糖と、食物繊維の一部(イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など)です。身近な食べ物でいうと、次のようなものに多く含まれます。
| 成分の種類 | 多く含む身近な食品の例 |
|---|---|
| オリゴ糖 | 玉ねぎ・ごぼう・にんにく・バナナ・大豆 |
| 水溶性食物繊維 | 大麦(もち麦)・海藻・果物・オーツ麦 |
| その他の難消化性成分 | 難消化性デキストリンなど(一部の特定保健用食品に使用) |
| レジスタントスターチ | 冷やごはん・冷たいポテトサラダ・いも類・豆類 |
食物繊維の中でも、腸内細菌がエサにして発酵させ、体によい「短鎖脂肪酸」を生み出すタイプは特に注目されています。この仕組みは発酵性食物繊維についての記事でくわしく解説しました。また、手軽に取り入れやすいもち麦や難消化性デキストリンも、プレバイオティクス的にはたらく身近な選択肢です。
プロバイオティクス(菌)が「兵隊」だとすると、プレバイオティクス(エサ)は「食料」。いくらよい菌を入れても、エサがなければ元気に働けません。両方をそろえるという発想が、次のシンバイオティクスにつながります。
シンバイオティクスとは?──「菌+エサ」を一緒にとる

「プロバイオティクスとプレバイオティクス、どっちを摂ればいいの?両方?」という疑問への答えが、このシンバイオティクスです。ISAPPは2020年に、シンバイオティクスを「生きた微生物と、宿主の微生物に選択的に利用される基質を含む混合物で、宿主に健康上の利益をもたらすもの」と定義しました。要は「生きた菌」と「その菌のエサ」をセットにしたものです。
この定義には、少しだけ知っておくと役立つ2つのタイプがあります。ひとつは、実績のあるプロバイオティクスとプレバイオティクスを単純に組み合わせた「相補的(そうほてき)」なタイプ。もうひとつは、その菌がそのエサを使うように、はじめから相性を考えて設計された「相乗的(そうじょうてき)」なタイプです。どちらも「菌とエサを一緒に」という発想は同じです。
【医師の視点/臨床的な考え方】難しい分類を覚える必要はありません。毎日の食卓でいえば、「ヨーグルト(菌)にバナナやオリゴ糖(エサ)を足す」「納豆(菌)と野菜・海藻(エサ)を一緒に食べる」だけで、家庭でできるシンバイオティクスになります。これが私が外来でいちばんおすすめしている、シンプルな腸活です。
ポストバイオティクスとは?──いちばん新しい言葉

最近よく見かけるようになった「ポストバイオティクス」は、4つの中でいちばん新しい言葉です。ISAPPは2021年に、これを「宿主に健康上の利益をもたらす、死んだ(不活化された)微生物、および/またはその成分の調製物」と定義しました。生きた菌そのものではなく、加熱などで働きを止めた菌の菌体や、その成分を指します。
この言葉は商品や論文で使われ方がバラバラで混乱があったため、専門家が定義を整理した、という経緯があります。「生きていないと意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、死んだ菌の成分でも体によい働きが報告されているものがあり、研究が進んでいる分野です。
ISAPPの定義では、ポストバイオティクスには不活化した菌体や菌の成分に加えて、菌が作り出した代謝物(腸内細菌が食物繊維から生み出す「短鎖脂肪酸」など)が含まれることもあるとされています。まだ発展途上の分野なので、いまの段階では「そういう新しい種類もあるんだ」と知っておく程度で十分です。
結局、どう食べればいい?腸活の実践ポイント

言葉の整理ができたところで、いちばん大事な「で、どうすればいいの?」に答えます。難しく考えず、次の2つをそろえるだけです。
- 菌(プロバイオティクス)…ヨーグルト・納豆・みそ・ぬか漬けなどの発酵食品を、毎日少しずつ
- エサ(プレバイオティクス)…野菜・海藻・果物・大麦・豆類など、食物繊維とオリゴ糖を意識して
この「菌+エサ」を毎日の食事で続けることが、いちばん自然なシンバイオティクスです。腸活全体の始め方は腸活の始め方 入門ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。ヨーグルトを食べるタイミングが気になる方はこちらの記事も参考になります。
一方で、気をつけたい点もあります。よかれと思って食物繊維やオリゴ糖を急にたくさん増やすと、おなかの張りやガス、下痢につながることがあります。特におなかが張りやすい方は、少しずつ増やすのが安心です。量の考え方は食物繊維は摂りすぎると逆効果?で、張りやすい方向けの食事は低FODMAP食の記事で解説しています。
効果が出るまでの期間は?「効果ない」と感じたときは
「プロバイオティクスは効果ない」「いつから効くの?」という声はよく聞きます。ここは科学的にも個人差が大きく、はっきりした日数を断言できる部分ではありません。以下は、私が外来でお伝えしている目安です。
【医師の視点/臨床的な考え方】効果の感じ方には個人差があります。腸内細菌の顔ぶれは一人ひとり違うため、「同じヨーグルトでも合う・合わない」があるのは自然なことです。数日で判断せず、まずは2〜4週間ほど続けて、おなかの調子を見てあげてください。これは治療ではなく、健康を底上げする習慣づくりです。気になる症状が続くときは、腸活に頼りきらず医療機関を受診しましょう。
よくある質問
Q. プロバイオティクスとプレバイオティクス、どちらが先?
どちらが先ということはなく、両方を一緒にとるのが理にかなっています。菌(プロバイオティクス)とエサ(プレバイオティクス)はセットで働くため、日々の食事で両方そろえる意識で十分です。
Q. サプリメントは必要ですか?
まずは食事からで十分です。発酵食品と食物繊維・オリゴ糖を含む食材を組み合わせれば、家庭でシンバイオティクスが実践できます。食事で足りないと感じるときの補助としてサプリを使う、という順番が現実的です。
Q. ポストバイオティクスは摂ったほうがいいですか?
ポストバイオティクスは定義が整理されたばかりの新しい分野です。現時点では、無理に取り入れようとするより、まずは「菌+エサ」の基本を続けることをおすすめします。
まとめ
- プロバイオティクス=体によい生きた菌そのもの(発酵食品など)
- プレバイオティクス=その菌のエサになる成分(オリゴ糖・食物繊維の一部)
- シンバイオティクス=菌とエサを組み合わせたもの(家庭でも実践できる)
- ポストバイオティクス=菌が作る成分や不活化した菌の成分(新しい分野)
名前は難しくても、やることはシンプルです。「よい菌」と「そのエサ」を、毎日の食事で一緒にとる。これだけで、家庭でできる立派な腸活になります。症状がないうちから、無理なく続けられる形で腸を整えていきましょう。
参考にした主要ソースURL一覧
- ISAPPプロバイオティクス定義(Hill C, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2014):https://doi.org/10.1038/nrgastro.2014.66
- ISAPPプレバイオティクス定義(Gibson GR, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017):https://doi.org/10.1038/nrgastro.2017.75
- ISAPPシンバイオティクス定義(Swanson KS, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2020):https://doi.org/10.1038/s41575-020-0344-2
- ISAPPポストバイオティクス定義(Salminen S, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021):https://doi.org/10.1038/s41575-021-00440-6
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「乳酸菌」:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ビフィズス菌」:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-029.html
- 厚生労働省eJIM(統合医療情報発信サイト)「経口プロバイオティクス」:https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c02/09.html

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