「若いのに下痢や腹痛が何か月も続いている」「体重がじわじわ減ってきた」「肛門のまわりに膿がたまる、痔ろうを繰り返す」——こうした症状が続くとき、その背景にクローン病が隠れていることがあります。
クローン病とは口から肛門まで、消化管のどこにでも炎症が起こりうる原因不明の慢性疾患で、国の指定難病に定められています。今のところ完治させる治療法はありませんが、近年は治療薬が大きく進歩し、症状が落ち着いた状態(寛解)を長く保ちながら、健康な人とほとんど変わらない生活を送れる方が増えています。
この記事では、卒後20年の消化器内科医が、クローン病の症状・原因・診断・最新の治療・食事・日常生活までを、信頼できる一次情報(難病情報センター、診療ガイドラインなど)に基づいてわかりやすく解説します。「潰瘍性大腸炎とどう違うの?」という疑問にもお答えします。
🦅 ハシビロー先生のひとこと
クローン病は「治らない怖い病気」というイメージを持たれがちですが、それは少し昔の印象です。大事なのは、症状がない時期でも治療を続け、定期的に検査を受けること。それさえできれば、進学・就職・結婚・出産まで、ふつうに実現している方がたくさんいますよ。
クローン病とは|どんな病気?

クローン病は、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍をひきおこす原因不明の病気です。潰瘍性大腸炎とともに「炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)」に分類されます。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
1932年に、ニューヨークの病院の内科医クローン先生らによって初めて報告されたことから、この名前がつきました。当初は小腸の末端(回腸末端)の炎症として報告されましたが、その後の研究で、口腔から肛門まで消化管のあらゆる部位に炎症が起こりうることがわかっています。
クローン病の大きな特徴は2つあります。1つは、炎症が連続せず、正常な部分をはさんで「とびとび」にできる(非連続性病変)こと。もう1つは、炎症が粘膜の浅い部分にとどまらず、腸の壁の深いところまで及ぶことです。この性質が、後述する狭窄(腸が狭くなる)や瘻孔(腸に穴があく)といった合併症につながります。
患者数はどのくらい?
日本のクローン病の患者数は年々増えています。難病情報センターによると、医療費助成を受けている方の数は、1976年度にはわずか128人でしたが、2023年度(令和5年度)には52,108人に達しています。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
増加の背景には、内視鏡による診断技術の向上や病気の認知度の高まりに加え、動物性脂肪を多く摂る欧米型の食生活の広がりが関係していると考えられています。
クローン病はどんな人に多い?(好発年齢・性別)

クローン病は10歳代後半〜20歳代の若い世代に多く発症します。難病情報センターによると、発症年齢のピークは男性で20〜24歳、女性で15〜19歳です。男女比はおよそ2対1で、男性に多い傾向があります。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
世界的に見ると先進国に多く、衛生環境や食生活が発症に影響していると考えられています。動物性脂肪やタンパク質を多く摂取する人、生活水準の高い地域でかかりやすいことが知られています。また、喫煙する人はしない人より発病しやすいとされており、これは潰瘍性大腸炎とは逆の特徴です。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
潰瘍性大腸炎では「喫煙が発症を抑える方向に働く」という不思議なデータがありますが、クローン病ではむしろ喫煙が発症・悪化のリスクです。同じIBDでも逆なんですね。クローン病の方には、禁煙を強くおすすめしています。
クローン病の症状|初期症状と進行したときのサイン

クローン病の症状は、炎症が起きている場所によってさまざまです。難病情報センターによると、特に多いのが腹痛と下痢で、半数以上の患者さんにみられます。そのほか、発熱、下血、腹部のしこり、体重減少、全身のだるさ、貧血などもしばしば現れます。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
見逃されやすい初期症状
クローン病で注意したいのが、肛門の症状から始まることが少なくない点です。痔ろう(肛門の周囲に膿のトンネルができる)や肛門周囲膿瘍が最初のサインになることがあり、こうした肛門病変が初発症状となるケースは患者さんの一定割合にのぼると報告されています。(参考:慶應義塾大学病院 KOMPAS「クローン病」)
「若い人で、なかなか治らない痔ろうを繰り返す」場合には、その奥にクローン病が隠れていないかを確認することが大切です。次のような症状が数週間〜数か月続くときは、消化器内科への受診をおすすめします。
- 腹痛・下痢が長く続く(特に右下腹部の痛み)
- 原因のわからない体重減少
- 微熱や全身のだるさが続く
- 繰り返す痔ろう・肛門周囲の腫れや痛み
- 血便がみられる
進行すると起こる合併症
クローン病は炎症が腸の壁の深くまで及ぶため、進行すると次のような腸管の合併症を起こすことがあります。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
- 狭窄(きょうさく):腸が狭くなり、ひどくなると腸閉塞を起こす
- 瘻孔(ろうこう):腸と腸、腸と皮膚などの間に異常なトンネルができる
- 膿瘍(のうよう):おなかの中に膿がたまる
- 穿孔(せんこう):腸に穴があく
さらに、腸の症状以外に、関節炎、虹彩炎(目の炎症)、結節性紅斑や壊疽性膿皮症(皮膚の症状)、口内炎など、腸管外の合併症を伴うこともあります。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
クローン病と潰瘍性大腸炎の違い

クローン病と潰瘍性大腸炎は、どちらもIBDに含まれ症状も似ていますが、いくつかの明確な違いがあります。診断の際にはこの違いを見分けることが重要です。
| 項目 | クローン病 | 潰瘍性大腸炎 |
|---|---|---|
| 炎症の部位 | 口から肛門まで全消化管(小腸末端・大腸が好発) | 大腸のみ |
| 炎症の広がり方 | とびとび(非連続性) | 直腸から連続的に広がる |
| 炎症の深さ | 腸の壁の深くまで及ぶ | 主に粘膜(浅い層) |
| 特徴的な症状 | 腹痛・下痢・体重減少・肛門病変 | 血便・粘血便・下痢 |
| 喫煙の影響 | 発症・悪化のリスク | 発症を抑える方向(ただし禁煙は推奨) |
炎症が大腸に限られるかどうか、連続性かとびとびか、肛門病変があるかなどが、両者を区別する手がかりになります。(参考:関西医科大学附属病院「クローン病」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
潰瘍性大腸炎については別記事で詳しく解説しています。「どっちの病気だろう?」と気になる方は、あわせて読んでみてください。
📝 関連記事:潰瘍性大腸炎とは|症状・原因・治療・食事を消化器内科医が解説【2026年最新】
クローン病の原因|なぜ起こる?遺伝するの?

クローン病の原因は、現在のところはっきりとは解明されていません。難病情報センターによると、もともと持っている遺伝的な素因を背景に、食事や腸内細菌などの環境要因が加わり、腸の免疫を担当する細胞が過剰に反応することで、炎症が起こり続けると考えられています。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
「遺伝するのか」という疑問をよく受けますが、クローン病は単一の遺伝子で発症する遺伝病ではありません。ただし、人種や地域によって発症頻度が異なり、家系内で発症がみられることもあるため、遺伝的な因子が関与していると考えられています。発症のしやすさに関わる遺伝子のタイプはいくつか報告されていますが、それだけで発症が決まるわけではなく、遺伝的素因と環境因子が複雑に絡み合って発症するというのが現在の理解です。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
クローン病の検査と診断

クローン病は、症状や血液検査の異常から疑い、画像検査で特徴的な所見を確認して診断します。難病情報センターによると、主に以下のような検査が行われます。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):縦走潰瘍(腸の縦方向の長い潰瘍)や敷石像(丸い石を敷き詰めたような粘膜)などを確認し、組織を採取して病理検査を行う
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):胃や十二指腸の特徴的な病変を確認する
- 小腸の検査:以前は難しかった小腸も、カプセル内視鏡やバルーン小腸内視鏡、小腸造影で観察できるようになっている
- CT・MRI・腹部超音波:狭窄や瘻孔、膿瘍などの合併症の評価に用いる
- 血液検査:炎症の程度(CRPなど)、貧血、栄養状態などを調べる
診断は、研究班がまとめた診断基準に沿って行われます。縦走潰瘍・敷石像・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫といった主要所見と、肛門病変や胃・十二指腸病変などの副所見を組み合わせて、確診・疑診を判定します。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
クローン病の診断には大腸カメラが欠かせません。「大腸カメラが怖い・つらそう」と感じる方も多いのですが、最近は鎮静剤を使って楽に受けられる工夫があります。検査の流れや痛くない受け方は、別記事で解説しています。
📝 関連記事:大腸カメラの痛くない受け方と下剤の選び方を消化器内科医が解説
クローン病の治療|栄養療法・薬物療法・手術

クローン病は、現時点で完治させる治療法はありません。そのため治療の目標は、腸の炎症を抑えて症状のない状態(寛解)に持ち込み、それをできるだけ長く維持して、患者さんの生活の質(QOL)を保つことにあります。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
ここで知っておきたいのが、クローン病の治療は「寛解導入療法」と「寛解維持療法」の二段構えで進むという考え方です。炎症が強い活動期には、まず火事を消すように炎症を鎮める治療(寛解導入療法)を行います。炎症が治まったら、再び燃え上がる(再燃する)のを防ぐための治療(寛解維持療法)に切り替え、これを長く続けます。(参考:アッヴィ「I know IBD|クローン病のそばに」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
クローン病の治療でいちばん誤解されやすいのが、この「二段構え」の後半部分です。症状が消えると「治った」と感じて薬や栄養剤をやめてしまう方がいますが、それは消えた火種にまだ熱が残っている状態。寛解維持療法を続けることこそが、再燃や手術を防ぐ最大のポイントなんです。
① 栄養療法 ── クローン病ならではの治療の柱
クローン病が潰瘍性大腸炎と大きく違う点の一つが、栄養療法が治療の柱として明確に位置づけられていることです。栄養療法は厚生労働省の治療指針において基本治療として挙げられており、寛解導入・寛解維持の双方に効果を示す治療法とされています。(参考:慶應義塾大学病院 KOMPAS「クローン病」)
栄養療法の狙いは、腸を休ませること(腸管の安静)と、腸を刺激して炎症を起こすと考えられる食事由来の成分(食餌抗原)を取り除くことにあります。方法は大きく2つに分けられます。(参考:慶應義塾大学病院 KOMPAS「クローン病」)
- 経腸栄養療法:脂肪をほとんど含まない成分栄養剤(エレンタールなど)や消化態栄養剤を、口から飲むか、鼻から入れたチューブを通して摂る方法。
- 完全静脈栄養:腸閉塞、腹腔内の膿瘍、重い肛門病変、大量出血など、腸を徹底的に安静にする必要があるときに、すべての栄養を点滴で補う方法。
近年は、後述する抗TNFα抗体などの薬物療法と栄養療法を併用することで、より高い効果が期待できるという報告も国内の多くの施設から出ています。(参考:エーザイ「クローン病における栄養療法の位置づけ」)
② 薬物療法 ── 作用するしくみ別に整理
薬物療法は、病気の重症度や効き具合に応じて、使う薬を段階的に選んでいきます。クローン病の薬は数多くありますが、「免疫のどの部分に作用するか」というしくみ(作用機序)ごとに整理すると、全体像がわかりやすくなります。難病情報センターの治療指針に挙げられている薬剤を中心に、グループごとに見ていきましょう。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤
- 代表薬:メサラジン
- 作用:炎症が起きている腸の粘膜に直接はたらき、炎症を抑える
- 位置づけ:軽症例で使われる基本の薬
副腎皮質ステロイド
- 代表薬:プレドニゾロン、ブデソニド
- 作用:免疫・炎症反応を全体的に強力に抑える
- 位置づけ:中等症以上の活動期に、炎症を鎮めて寛解に持ち込む目的で使う。長期の寛解維持には用いません
免疫調節薬
- 代表薬:アザチオプリン
- 作用:過剰にはたらいている免疫細胞(リンパ球)の活動を抑える。効果が出るまで数週間〜数か月かかる
- 位置づけ:ステロイドを減らすと悪化する例などで、主に寛解維持に使う
これら従来の薬で効果が不十分な難治例には、免疫の特定の経路を狙い撃ちする生物学的製剤や分子標的薬が使われます。これらは、炎症を引き起こす免疫のしくみのそれぞれ異なる部分をピンポイントで抑えるのが特徴で、作用するしくみごとに次のグループに分かれます。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
抗TNFα抗体製剤
- 代表薬:インフリキシマブ、アダリムマブ
- 作用:炎症を強く引き起こすたんぱく質「TNFα」を中和する
- 位置づけ:従来治療で効果不十分な中等症〜重症例。クローン病の難治例で長く使われてきた薬
抗IL-12/23p40抗体製剤
- 代表薬:ウステキヌマブ
- 作用:炎症に関わるたんぱく質「IL-12」と「IL-23」の共通部分(p40)をブロックする
抗IL-23p19抗体製剤
- 代表薬:リサンキズマブ、ミリキズマブ、グセルクマブ
- 作用:「IL-23」だけを選択的にブロックする(IL-12は抑えない)
- 位置づけ:比較的新しいグループで、クローン病ではリサンキズマブが2022年9月(参考:新薬情報オンライン「スキリージ皮下注」)、ミリキズマブが2025年3月(参考:新薬情報オンライン「オンボー」)、グセルクマブが2025年6月(参考:J&J「トレムフィア クローン病承認」)に、それぞれ中等症〜重症のクローン病に対する適応が承認されています
抗接着分子抗体(抗α4β7インテグリン抗体)
- 代表薬:ベドリズマブ
- 作用:炎症を起こすリンパ球が腸の血管から腸の組織へ入り込むのを防ぐ。腸に選択的にはたらく
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
- 代表薬:ウパダシチニブ
- 作用:細胞の中で炎症の指令を伝える「JAK」という酵素をブロックする
- 特徴:注射ではなく飲み薬(経口薬)
このほか、肛門病変や瘻孔に対しては、抗菌薬(メトロニダゾール、シプロフロキサシンなど)が用いられることもあります。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
薬の名前がたくさん出てきて圧倒されたかもしれませんが、覚えてほしいのは「作用するしくみが薬ごとに違う」という一点です。だからこそ、ある薬で効果が出なくても、別のしくみを狙う薬に切り替えるという選択肢があります。「一つ効かなかった=もう打つ手がない」ではありません。なお、リサンキズマブの導入療法が皮下注射でも使えるようになった件は、別記事でくわしく解説しています。
📝 関連記事:スキリージがクローン病の導入療法でも皮下注射に|消化器内科医が解説
③ 寛解維持療法 ── 「再燃させない」ための継続治療
炎症が治まって寛解に入ったら、治療は「その状態を保つ」段階に移ります。寛解維持療法では、5-ASA製剤、免疫調節薬(アザチオプリンなど)、在宅経腸栄養療法、そして寛解導入で効果のあった生物学的製剤などが、引き続き用いられます。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
ここで重要なのは、見た目に症状が落ち着いていても、自己判断で治療をやめないことです。クローン病は寛解と再燃をくり返す病気で、症状がない時期でも腸の炎症がひそかにくすぶっていることがあります。だからこそ、定期的な内視鏡検査や、便中カルプロテクチン、血清LRG(ロイシンリッチα2グリコプロテイン)などのバイオマーカーで腸の炎症の状態を確認しながら、治療を継続することが大切です。(参考:エーザイ「クローン病における栄養療法の位置づけ」)
④ 外科治療・内視鏡治療 ── 合併症への対応
クローン病は炎症が腸の壁の深くまで及ぶため、内科治療だけでは対応できない合併症が起こることがあります。高度な狭窄、穿孔(腸に穴があく)、膿瘍などには外科治療が必要になります。その際は、腸をできるだけ多く残すために、小範囲の切除や狭窄形成術が行われるのが原則です。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
難治性の痔ろうなどの肛門病変には、切開して膿を出す処置やドレナージ(膿を排出するための管を入れる処置)が行われます。また、腸の狭窄に対しては、内視鏡を使って狭くなった部分を風船で広げる治療(内視鏡的バルーン拡張術)が選ばれることもあります。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
「手術=治療の失敗」と落ち込む必要はありません。クローン病の手術は、悪くなった部分を取り除いて生活を立て直すための前向きな選択肢です。ただし、手術をしても病気そのものが治るわけではないため、術後も再発予防の治療を続けることが、次の手術を防ぐうえでとても大切になります。なお、大腸の状態を確認する検査については、別記事でくわしく解説しています。
📝 関連記事:大腸カメラの痛くない受け方と下剤の選び方を消化器内科医が解説
クローン病の食事|何を食べていい?気をつけることは?

食事はクローン病の方が最も気になるテーマの一つです。難病情報センターによると、病気の活動性や症状が落ち着いていれば、通常の食事をとることが可能です。ただし、食事によって病状が悪化するのを避けることが最も重要とされています。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
調子が悪いときには、低脂肪・低残渣(消化に負担の少ない、食物繊維の少ない食事)が勧められます。ただし、病変の部位や消化吸収の機能は患者さんごとに異なるため、主治医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った食品を見つけていくことが大切です。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
日常生活で特に意識したいのが、動物性脂肪のとりすぎはおなかの炎症を悪化させる可能性があるという点です。調子が良い時期でも、この点には注意が必要とされています。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
🦅 ハシビロー先生のひとこと
「これを食べれば治る」「これは絶対ダメ」という万人共通の食事ルールはありません。狭窄がある方は食物繊維の多いものに注意が必要ですし、寛解期で問題なく食べられる方もいます。自己判断で極端な制限をするより、主治医・栄養士と一緒にあなた専用の食べ方を作っていくのが正解です。
クローン病の経過と予後|寿命は?

「クローン病になると寿命はどうなるのか」と不安に思う方は少なくありません。難病情報センターによると、診断後10年の累積生存率は96.9%と、生命予後は良好とされています。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
一方で、手術が必要になる方は少なくありません。難病情報センターのデータでは、手術率は発症後5年で33.3%、10年で70.8%とされ、手術後の再手術率も5年で28%と報告されています。だからこそ、再燃・再発を予防し、合併症が起こる前に治療介入することが重要です。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
近年の治療の進歩により、手術を受ける患者さんは減ってきていることも明らかになっています。ただし、見た目に症状が落ち着いていても病気がひそかに進行することがあるため、定期的な内視鏡などの検査で病気の状態を把握することがきわめて大切です。(参考:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
クローン病は指定難病|医療費助成について
クローン病は厚生労働省の指定難病(指定難病96)に定められており、一定の基準を満たすと医療費助成の対象になります。重症度はIOIBDスコアという指標で判定され、2点以上が助成の対象とされています。(参考:難病情報センター「クローン病 診断・治療指針」)
助成を受けるには、お住まいの自治体の窓口で申請手続きが必要です。1か月あたりの自己負担の上限額は、世帯の所得に応じて設定されます。詳しい制度の内容や申請方法は、難病情報センターの医療費助成制度のページで確認できます。(参考:難病情報センター「医療費助成制度」)
クローン病と上手に付き合うために

クローン病は、寛解と再燃を繰り返しながら長く付き合っていく病気です。完治を目指すというより、適切な治療を続けて寛解を長く維持することが現実的なゴールになります。多くの方が、治療を続けながら進学・就職・結婚・出産といったライフイベントを実現しています。
そのために大切なのは、次の3点です。
- 症状がない時期でも治療を続ける(自己判断で薬をやめない)
- 定期的に検査を受ける(おなかが落ち着いていても病気は進行しうる)
- 食事や禁煙など、生活面でも病気を悪化させない工夫をする
気になる症状が続くとき、診断後に不安があるとき、いずれの場合も、まずは消化器内科に相談してください。早く治療を始めることが、将来の入院や手術のリスクを下げることにつながります。
🦅 ハシビロー先生からのメッセージ
クローン病は「難病」という言葉の重さに圧倒されてしまいがちですが、治療の進歩により、病気とうまく付き合いながら自分らしい人生を送っている方がたくさんいます。一人で抱え込まず、主治医や周囲の人と相談しながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
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本記事の著者は、消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・総合内科専門医の3つの専門医資格を持ち、卒後20年の臨床経験を有する現役の消化器内科医です。本記事は一般の方向けの情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
主な参考文献
・難病情報センター「クローン病(指定難病96)病気の解説(一般利用者向け)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/81
・難病情報センター「クローン病(指定難病96)診断・治療指針(医療従事者向け)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/219
・難病情報センター「医療費助成制度」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
・慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「クローン病」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000800/
・関西医科大学附属病院「クローン病」
https://hp.kmu.ac.jp/treatment/departments/uc_crohn/crohn/

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