【この記事の前提】 本記事は、ヒトを対象にした研究(特にRCTを統合したメタ解析)で確認できた範囲の事実と、そこから考えられる解釈(医師の推論)を分けて解説します。「もち麦を食べれば必ず効く・病気が治る」と断定するものではありません。
もち麦って、結局なにが体にいいの?

「もち麦が健康にいい」とよく聞きますが、何が・どこまで分かっているのでしょうか。
もち麦は大麦の一種で、水溶性食物繊維「β-グルカン(ベータグルカン)」を多く含むのが特徴です。実は、この大麦β-グルカンには、ヒトの研究で確認された働きがいくつかあります。この記事では消化器内科医の視点で、研究で裏づけられた効果と、料理が苦手でも続けられる食べ方を整理します。
腸活全体の進め方は腸活の始め方|入門ガイド、食物繊維の基礎は発酵性食物繊維とはもご覧ください。
効果①:コレステロール(LDL)を下げる働き

14件のランダム化比較試験(合計615人)を統合したメタ解析では、大麦β-グルカンを1日あたり中央値約6.5〜6.9g、約4週間とることで、LDL(悪玉)コレステロールとnon-HDLコレステロールが有意に低下したと報告されています。〔出典:Ho HVT, et al. Eur J Clin Nutr. 2016〕
別の11件のRCTを統合したメタ解析でも、大麦・大麦由来β-グルカンが総コレステロールとLDLコレステロールを下げたと報告されています。〔出典:AbuMweis SS, et al. Eur J Clin Nutr. 2010〕
つまり「コレステロールを下げる」効果は、もち麦(大麦β-グルカン)の中でも比較的しっかりした根拠があると考えられます。ただし効果の大きさには個人差・研究間のばらつきがある点には注意が必要です。
効果②:食後の血糖値の上がり方をゆるやかにする

大麦の摂取と血糖の関係を調べた研究(31件の対照試験を統合したメタ解析)では、大麦の摂取が食後30・60・120分の血糖値を有意に下げた一方、空腹時血糖やHbA1c(長期の指標)には有意な変化はなかったと報告されています。
大麦・オーツ麦のβ-グルカンに関する総説でも、β-グルカンが腸内で粘性を高めることで、食後血糖の上昇をゆるやかにする仕組みが整理されています。〔出典:Tosh SM & Bordenave N. Nutr Rev. 2020〕
「食後の血糖の急上昇をゆるやかにする」働きは期待できますが、あくまで“食後の一時的な反応”で、糖尿病が治るといった話ではありません。持病のある方は主治医にご相談ください。
もち麦と押し麦の違いは?(腸活で選ぶならどっち)

「もち麦」と「押し麦」、どちらも大麦ですが、実はこの2つは“分け方の軸”が違います。ここを整理すると選びやすくなります。
大麦には2つの分類があります。ひとつは「もち性」と「うるち性」という品種(性質)の違いで、お米に「もち米」と「うるち米」があるのと同じです。
もうひとつは「押し麦」「丸麦」などの加工法の違いです。つまり「もち性/うるち性」は品種の話、「押し麦」は加工法の話で、別の軸の言葉です。
農林水産省によると、もち麦(もち性大麦)は、うるち性大麦よりも食物繊維量が多くなる傾向があり、一般的にもち麦にはうるち性大麦の約1.5倍の「β-グルカン」が含まれます。(※これは「もち性 vs うるち性」という品種どうしの比較です。)〔出典:農林水産省〕
β-グルカンには、デンプンを包み込んでデンプンの消化を抑え、糖の吸収をゆるやかにする働きがあるとされています。〔出典:農林水産省〕
「押し麦」は大麦を蒸して平たく加工したものの呼び名で、原料となる大麦の品種は商品によって異なります。そのため「押し麦だからβ-グルカンが少ない」と一概には言えません。
もち麦の健康効果の主役は水溶性食物繊維「β-グルカン」です。品種で見ると、もち性のもち麦はβ-グルカンが多い傾向があるため、腸活やコレステロール対策を目的に選ぶなら、もち麦は有力な選択肢といえます。ただしβ-グルカン量は品種・製品によって差があるので、最終的にはパッケージの食物繊維量(できればβ-グルカン量)の表示を確認して選ぶのが確実です。
効果③:腸内環境(食物繊維としての働き)
β-グルカンは水溶性食物繊維で、上記の総説で腸内細菌に働きかけ(腸内環境を整える方向に作用する)ことが、心臓・血糖への効果と並ぶ柱として整理されています。〔出典:Tosh SM & Bordenave N. Nutr Rev. 2020〕
ただし「もち麦で腸内環境がこう変わる」という詳細なメカニズムの多くは、現時点では動物実験など前臨床のデータが中心で、ヒトでの決定的な結論は今後の研究を待つ段階です。本記事ではヒトでの確かな話と、研究途上の話を分けています。
👉 食物繊維が腸内で短鎖脂肪酸に変わる仕組みは発酵性食物繊維とはで詳しく解説しています。
料理が苦手でも続けられる「もち麦の食べ方」

研究では「数週間の継続」で効果が評価されています〔Ho 2016/AbuMweis 2010〕。続けやすさが何より大切なので、調理がほぼ不要な方法を挙げます。
- 白米に混ぜて炊くだけ:いつものお米にもち麦を加えて炊くのが一番簡単。最初は少なめから。
- 市販のレトルト・パックを使う:温めるだけのもち麦ごはんパックなら調理ゼロ。
- スープや味噌汁に入れる:ゆでたもち麦や、スープに入れるタイプを活用。
毎日続けやすいよう、もち麦はスーパーやネットで手軽に入手できます。
注意点:「合わない人」「おなら・お腹の張り」もある

もち麦は食物繊維が豊富なぶん、体質や量によっては不調が出ることもあります。
- おなら・お腹の張りが増えることがある:食物繊維が腸で発酵するため。心配な方は少量から始めましょう。
- 摂りすぎは逆効果になることがあります。適量の考え方は食物繊維は摂りすぎると逆効果?へ。
- お腹の調子が悪いとき・特定の持病がある方は、合わない場合があります。気になる症状が続くときは医療機関にご相談ください。
※「絶対に食べてはいけない人」を断定する強い根拠は本記事の調査では見つかりませんでした。体質・体調により合うかどうかで判断するのが現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q. サプリで食物繊維をとるのとどっちがいい?
A. まずは食品からが基本です。サプリとの違いはビオフェルミンは腸活サプリの代わりになる?で解説しています。
Q. 便秘ぎみなのですが?
A. 食物繊維は役立ちますが、原因により対策が異なります。便秘の悩みを解消!原因と対策もご覧ください。
まとめ
- もち麦の主役は水溶性食物繊維β-グルカン。もち麦はうるち性大麦の約1.5倍のβ-グルカンを含みます〔農林水産省〕。
- ヒトのメタ解析でLDLコレステロール低下〔Ho 2016/AbuMweis 2010〕、食後血糖の上昇をゆるやかにする働き〔メタ解析/Tosh 2020〕が確認されています。
- 腸内環境への働きは有望ですが、詳しい仕組みは研究途上の部分もあります。
- 効果は数週間の継続が前提。白米に混ぜる・パックを使うなど料理不要の方法で続けやすく。
- 食物繊維が多いぶんおなら・お腹の張りが出ることも。少量から、体質に合わせて。
参考文献
文献情報はPubMed(米国国立医学図書館)および公的機関の情報に基づきます。
- Ho HVT, et al. A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials of the effect of barley β-glucan on LDL-C, non-HDL-C and apoB for cardiovascular disease risk reduction. Eur J Clin Nutr. 2016;70(11):1239-1245.(メタ解析)DOI
- AbuMweis SS, et al. β-glucan from barley and its lipid-lowering capacity: a meta-analysis of randomized, controlled trials. Eur J Clin Nutr. 2010;64(12):1472-1480.(メタ解析)DOI
- Tosh SM, Bordenave N. Emerging science on benefits of whole grain oat and barley and their soluble dietary fibers for heart health, glycemic response, and gut microbiota. Nutr Rev. 2020;78(Suppl 1):13-20.(総説)DOI
- 農林水産省「もち麦にはどのような特徴がありますか。」(消費者の部屋)https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1505/01.html

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