【この記事の前提】
この記事は、2026年6月にアッヴィ合同会社が発表したプレスリリースをもとに解説しています。ご紹介する内容は「承認を求めて申請した」という段階のもので、2026年6月時点ではまだ実際の診療で使えるわけではありません。また、特定の治療をおすすめするものではありません。治療方針は必ず主治医とご相談ください。
クローン病の治療では、ここ数年で「生物学的製剤」という選択肢がずいぶん増えてきました。今回はそのひとつ、スキリージ(一般名:リサンキズマブ)について、新しい使い方の承認申請が出されたというニュースを、消化器内科医の立場からやさしく解説します。
今回のニュースを一言でいうと?
「これまで点滴でしか行えなかった寛解導入療法を、皮下注射でもできるようにするための申請が出された」というニュースです。アッヴィ合同会社が、中等症から重症の活動性クローン病の患者さんを対象に、スキリージの皮下投与による導入療法の追加を、厚生労働省に申請しました(承認事項一部変更承認申請)。
スキリージ(リサンキズマブ)とは?
スキリージは、炎症を引き起こす体内の物質であるIL-23(インターロイキン23)の一部(p19サブユニット)にくっつき、そのはたらきを選んで抑える生物学的製剤です。クローン病では、この免疫の暴走を抑えることが治療の柱のひとつになります。
このお薬は、すでに日本国内でクローン病を含む7つの病気(適応症)に対して承認されており、実績のある薬です。同じくIL-23を抑えるしくみは、クローン病とよく似た病気である潰瘍性大腸炎の治療でも注目されています。
「導入療法」と「維持療法」のおさらい
クローン病の薬物治療は、大きく2つの段階に分けて考えます。
- 寛解導入療法……強い炎症をしっかり抑え込み、症状の落ち着いた「寛解」の状態へ持っていく最初のステップ
- 寛解維持療法……落ち着いた状態を長く保ち、再燃(ぶり返し)を防ぐステップ
今回のニュースで変わるのは、このうち最初の「導入療法」のやり方です。スキリージの場合、これまで導入療法は点滴(静脈への点滴静注)のみで行うことになっていました。
何が変わる? 点滴から皮下注射へ
| これまで | 今回の申請内容 | |
|---|---|---|
| 導入療法のやり方 | 点滴(静脈に時間をかけて投与)のみ | 皮下注射という選択肢を追加 |
点滴は、医療機関で一定の時間じっと座って受ける必要があり、通院や時間の面で負担になりがちです。皮下注射はそれよりも短時間で済むため、申請が通れば患者さんの負担を減らし、治療の選択肢を広げることが期待されます。
なお、スキリージの維持療法は、すでに「オートドーザー」と呼ばれるペン型の器具などを使った自己注射(皮下注射)で行われています。今回の申請は、その手前の「最初の導入から皮下注射で完結できるかもしれない」という点が新しいところです。
根拠となった「AFFIRM試験」とは?
今回の申請は、AFFIRM試験(M23-784試験)という国際共同第3相試験の結果にもとづいています。本物の薬と「プラセボ(効果のない偽の薬)」を比べて、皮下投与による導入療法にきちんと効果と安全性があるかを確かめた、信頼性の高い試験です。こうした厳密な試験を経て申請されている点は、安心材料のひとつといえます。
「注射で楽に」という流れは他の薬でも
「通院や投与の負担を減らす」という今回の方向性は、スキリージに限った話ではありません。同じくIL-23を抑える仲間のお薬「トレムフィア」でも、自宅で注射できるしくみが整ってきています。くわしくは、こちらの記事もあわせてどうぞ。
👉 トレムフィアが「自宅で注射」できるように|潰瘍性大腸炎・クローン病に朗報
まとめ
- スキリージ(リサンキズマブ)の皮下注射による導入療法が承認申請された
- これまで導入療法は点滴のみだったため、選択肢が増える可能性がある
- 国際共同第3相AFFIRM試験の結果にもとづく申請
- ただし2026年6月時点では「申請」の段階で、まだ実際には使えない
治療法に選択肢が増えるということは、それだけ一人ひとりの生活に合った形を選びやすくなるということです。長くつき合っていくクローン病だからこそ、こうした地道な前進は心強いニュースだと感じます。今後の承認の動きにも、注目していきたいですね。
参考文献
- アッヴィ合同会社「中等症から重症のクローン病患者さんへのリサンキズマブの皮下投与の導入療法、承認事項一部変更承認を申請」(共同通信PRワイヤー、2026年6月)
https://kyodonewsprwire.jp/index.php/release/202606110742
※この記事は一般向けの情報提供を目的としたもので、診断や治療を勧めるものではありません。治療について気になることがある方は、必ず主治医にご相談ください。

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