大腸がん予防のために今日からできること|消化器内科医が解説

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大腸がん予防のために今日からできる7つの習慣を消化器内科専門医が解説する記事のアイキャッチ画像

「大腸がんを予防したいけれど、何から始めればいいかわからない」――そんな疑問にお答えします。

結論からお伝えすると、大腸がんは生活習慣の見直しと定期検診の組み合わせで、リスクを大きく下げられるがんです。早期に発見できれば治癒率も高く、「防げる・治せるがん」の代表でもあります。

この記事では、消化器内科専門医として20年以上の臨床経験を持つ筆者が、最新のエビデンスに基づいて今日から実践できる大腸がん予防法をわかりやすく解説します。

この記事を書いた人
消化器内科医(卒後20年)/市中病院で内視鏡・炎症性腸疾患・消化器がん化学療法を担当
日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医・総合内科専門医

📖 この記事はこんな方におすすめ

  • 家族や親族に大腸がんの人がいて不安な方
  • 40歳を過ぎて検診をどうしようか迷っている方
  • 食事や運動で大腸がんを予防したい方
  • 便潜血検査や大腸カメラについて知りたい方
目次

大腸がんは日本人にとって最も身近ながんのひとつ

大腸がんは日本人女性のがん死亡数1位、年間約15万人が新たに診断される身近ながんであることを示すインフォグラフィック

「大腸がんは怖い病気だけど、自分には関係ない」――そう思っていませんか?

厚生労働省の人口動態統計(2024年確定数)によると、女性のがん死亡数の第1位、男性では第2位を大腸がんが占めています。罹患数(新たに診断される人数)は男女合計で年間約15万人にのぼり、すべてのがん種のなかで最も多い数字です。

さらに、国立がん研究センターは将来推計として、2035〜2039年には年間罹患数が約21万人に達すると予測しています。日本は先進国のなかでも大腸がん死亡数が最も多い国とされ、対策の強化が急務となっています。

📊 覚えておきたい数字

  • 女性のがん死亡数:第1位が大腸がん
  • 男性のがん死亡数:第2位が大腸がん
  • 年間罹患数:約15万人(全がんで最多)
  • 生涯で大腸がんになる確率:男性約11%、女性約8%

初期は無症状――大腸がんが「サイレントキラー」と呼ばれる理由

大腸がんは初期に症状がほぼ出ないサイレントキラーで、症状が出てからでは進行していることを示すイラスト

大腸がんの最大の怖さは、初期にはほとんど症状が出ないことにあります。

血便、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す、お腹の張り、貧血、体重減少――こうした症状が出てから医療機関を受診したとき、すでに進行がんになっているケースは少なくありません。実際、外来で「症状がなかったので来なかった」とおっしゃる患者さんに何度もお会いしてきました。

「症状がないから大丈夫」ではなく、
「症状がないうちに調べる」が正解です。

これは消化器内科医として、声を大にしてお伝えしたいメッセージです。

近年は若い世代の大腸がんも世界的に増加しており、「年齢的にまだ早い」とは言い切れない時代になっています。詳しくは 若い世代の大腸がんが増加中|消化器内科医が最新研究をわかりやすく解説 をご覧ください。

大腸がんのリスクを上げる生活習慣【4つの要因】

大腸がんのリスクを上げる4つの生活習慣(加工肉・赤身肉、食物繊維不足、飲酒、喫煙)を示すインフォグラフィック

大腸がんは、生活習慣と非常に深く関わっているがんです。国立がん研究センターの「科学的根拠に基づくがんリスク評価」では、以下の要因が大腸がんリスクを高めることが「確実」または「ほぼ確実」とされています。

① 加工肉・赤身肉の食べすぎ

ソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉、および牛肉・豚肉などの赤身肉を多く摂取する習慣は、大腸がんリスクを高めることがWHO(世界保健機関)の評価でも認められています。

毎日のように加工肉や赤身肉を食べる方は、週に数回以下に抑えることを意識してみてください。「鶏肉や魚に置き換える日を週に2〜3日つくる」だけでも違います。

② 食物繊維の不足

食物繊維は腸内環境を整え、便の通過時間を短くすることで発がん物質の腸壁への接触を減らす働きがあります。1日21g以上(成人)が目標ですが、現代の日本人は平均で5g以上不足しているのが実情です。

とくに最近注目されているのが「発酵性食物繊維」。腸内細菌に発酵されて短鎖脂肪酸を生み出し、腸を内側から守る働きがあります。詳しくは 「腸活」の新常識、発酵性食物繊維とは?〜短鎖脂肪酸が、症状のない今のうちから腸を守る〜 で解説しています。

③ 飲酒

アルコールは大腸がんリスクを「確実」に高める要因です。とくに1日にエタノール換算で23g以上(日本酒1合、ビール中瓶1本相当)を超える飲酒で、リスクは段階的に上がります。

「お酒は適量なら健康によい」と言われた時代もありましたが、近年の大規模研究では大腸がんに関しては少量でもリスクが上がることが報告されています。週2日以上の休肝日を設けることが現実的な第一歩です。

④ 喫煙

国立がん研究センターは、喫煙が日本人の大腸がんリスクを上げることは「確実」と評価しています。1日40本以上の喫煙者では、罹患リスクが約40%上昇するという国際的なメタ解析の結果もあります。

禁煙は何歳から始めても遅くありません。年齢を重ねた方ほど、禁煙の恩恵は大きくなります。

要因リスクへの影響エビデンス
喫煙↑ 上げる確実
飲酒↑ 上げる確実
肥満(BMI高値)↑ 上げる確実
加工肉↑ 上げる確実(WHO)
身体活動↓ 下げるほぼ確実
食物繊維↓ 下げるほぼ確実

近年の研究では、生活習慣だけでなく腸内細菌が出す毒素も大腸がんの一因として注目されています。日本人大腸がん患者の約半数で関与が示唆された「コリバクチン」については、日本人大腸がんの5割に潜む『コリバクチン』とは? で詳しく解説しました。

今日からできる大腸がん予防法【専門医おすすめの7つの習慣】

大腸がん予防のために今日からできる7つの習慣(食物繊維、肉を減らす、運動、適正体重、節酒、禁煙、毎年検診)を示すインフォグラフィック

ここからは、外来で実際に患者さんにお伝えしている具体的な予防アクションをまとめます。すべてを完璧にやる必要はありません。「できそうなものから1つ」が継続のコツです。

習慣1|食物繊維を1日21g以上摂る

野菜、豆類、海藻、きのこ、全粒穀物などを意識的に取り入れましょう。とくに「ベジファースト」(食事の最初に野菜を食べる)は、血糖値の上昇を抑える効果もあり一石二鳥です。

目安としては、生野菜なら両手に山盛り1杯、加熱野菜なら片手に1杯を1日3食。これで350gの野菜摂取目標に近づきます。

習慣2|加工肉・赤身肉を週数回までに抑える

毎朝ベーコンエッグ、お弁当にハム、夕食はステーキ……という食生活は、明らかに食べすぎです。魚・鶏肉・大豆製品に置き換える日を意識的に設けましょう。

習慣3|週150分以上の運動を習慣にする

WHOは成人に対して週150分以上の中等度の有酸素運動を推奨しています。これは1日30分のウォーキングを週5日続ければ達成できる量です。

運動は腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進し、便通を整え、肥満も予防します。激しい運動でなくて構いません。階段を使う、一駅手前で降りて歩く――そんな積み重ねで十分です。

習慣4|適正体重を維持する

肥満は大腸がんリスクを「確実」に高める要因です。BMIで25を超える方は、まずマイナス3kgを目標に。極端な減量は不要で、体重の3〜5%減でも腸内環境や代謝に好影響があるとされています。

習慣5|飲酒は控えめに、休肝日を週2日以上

「ゼロが理想、難しければ控えめに」が大腸がん予防の基本姿勢。ビールなら1日中瓶1本まで、日本酒なら1合まで。週2日以上は完全に休む日をつくりましょう。

習慣6|禁煙する(受動喫煙も避ける)

禁煙は、大腸がんだけでなく肺がん、心血管疾患、脳卒中など多くの病気の予防になります。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を利用するのも有力な選択肢です。健康保険が使える場合があります。

習慣7|40歳を過ぎたら毎年「便潜血検査」を受ける

これが最も重要なポイントです。便潜血検査(免疫法)は痛くない・恥ずかしくない・安価で、自治体の検診や人間ドックで受けられます。

2024年版「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」でも、便潜血検査免疫法はグレードA(科学的根拠が十分にある)として、対策型検診(住民検診)での実施が推奨されています。

陽性となった場合は必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で精密検査を受けてください。「痔の出血だと思った」と精密検査を先延ばしにする方が一定数おられますが、これは非常に危険です。

✅ あなたの予防習慣チェックリスト

  • 食物繊維を意識して摂れている(野菜350g/日)
  • 加工肉・赤身肉は週数回までに抑えている
  • 週150分以上の運動習慣がある
  • BMIは25未満を維持している
  • 飲酒は適量、週2日以上の休肝日がある
  • タバコを吸っていない(または禁煙中)
  • 40歳以上で、毎年便潜血検査を受けている

3つ以上ついていない項目があれば、今日から1つずつ取り組んでみましょう。

便潜血検査と大腸内視鏡検査――どちらを受けるべき?

大腸がん検診における便潜血検査と大腸内視鏡検査の違いと使い分けを比較したイラスト

「便潜血検査だけで大丈夫?」「最初から大腸カメラを受けるべき?」という質問もよくいただきます。

結論としては、40歳以上の一般の方は、まず毎年の便潜血検査で十分です。便潜血が陽性になった場合や、血縁者に大腸がんの既往がある方、過去にポリープを指摘された方は、大腸内視鏡検査を受けることが推奨されます。

項目便潜血検査大腸内視鏡検査
負担非常に軽い(採便のみ)中等度(前処置あり)
費用(自費目安)数百円〜2,000円2〜3万円
頻度毎年5〜10年に1回(症例による)
ポリープ切除不可同時に可能
推奨40歳以上の一次検診陽性者・高リスク者

大腸内視鏡検査では、見つかったポリープをその場で切除できるため、「がんになる前」の段階で芽を摘めるのが最大の利点です。大腸カメラ全般について詳しく知りたい方は 大腸カメラの記事一覧 もあわせてご覧ください。

大腸がん予防に関するよくある質問

大腸がん予防に関するよくある4つの質問(家族歴・便秘・サプリ・検診開始年齢)をまとめたイラスト

Q1. 家族に大腸がんの人がいると、自分もなりやすいですか?

はい、リスクは高くなります。第一度近親者(親・兄弟姉妹・子)に大腸がんの人がいる場合、リスクは2〜3倍になるとされています。発症年齢が若いほど、また複数人いる場合はさらにリスクが高まります。心当たりがある方は、検診開始年齢を早める・大腸内視鏡を受けるなど、主治医にご相談ください。

Q2. 便秘が続くと大腸がんになりやすいですか?

「便秘=大腸がん」と直接結びつくエビデンスは限定的ですが、慢性的な便秘は腸内環境の悪化と関連します。また、最近便通が変わった(細くなった、下痢と便秘を繰り返す、残便感が強い)場合は、大腸がんのサインの可能性もあるため一度検査を検討してください。便秘そのものへの対処は 便秘の悩みを解消!原因と対策を専門医が徹底解説! で詳しく書いています。

Q3. 過敏性腸症候群(IBS)は大腸がんと関係ありますか?

IBS自体が大腸がんになるわけではありませんが、症状が似ているため大腸がんを「IBSだと思い込んでいた」というケースがあります。とくに中高年で症状が初めて出た方は、一度大腸内視鏡で器質的な病気を除外することをおすすめします。詳しくは 過敏性腸症候群(IBS)とは?症状・原因・治療法を専門医が解説! をご覧ください。

Q4. サプリメントで大腸がんを予防できますか?

現時点で「これを飲めば大腸がんを予防できる」と科学的に証明されたサプリメントはありません。ビタミンD、カルシウム、葉酸などについては研究が続いていますが、エビデンスは限定的です。食事・運動・検診の3本柱に勝るものはないというのが現時点の結論です。

Q5. 何歳から検診を始めるべきですか?

厚生労働省は40歳以上を対象に毎年の便潜血検査を推奨しています。ただし、家族歴がある方や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患がある方は、より早期から専門医の指示でフォローを始める必要があります。

まとめ|大腸がんは「防げる・治せる」がん

大腸がんは生活習慣の改善と定期検診で防げて治せるがんであることを伝えるまとめイラスト

大腸がんは死亡数の多いがんですが、早期に発見できればほぼ治せるがんでもあります。生活習慣の改善と定期検診――この2つを両輪で回すことが、最も確実な予防策です。

本記事の要点をまとめます。

  • 大腸がんは女性のがん死亡数1位、男性2位(年間約15万人が罹患)
  • 初期は無症状。「症状が出てから」では遅いことが多い
  • リスクを上げる:加工肉・赤身肉、食物繊維不足、飲酒、喫煙、肥満
  • リスクを下げる:食物繊維、運動、適正体重、節酒、禁煙
  • 40歳を過ぎたら毎年の便潜血検査が最重要
  • 陽性になったら必ず大腸内視鏡で精密検査を

すべてを一度に完璧にやる必要はありません。「今日から1つ」始めることが、10年後のあなたを守ります

あなたの腸、ちゃんとケアできていますか?

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参考文献・出典

  • 国立がん研究センター「大腸がんファクトシート 2024」
    https://www.ncc.go.jp/jp/icc/crcfactsheet/index.html
  • 国立がん研究センター「がん情報サービス 最新がん統計」
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
  • 国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」
  • 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版(国立がん研究センター)
  • 大腸癌研究会編「大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版」金原出版, 2024年
  • 厚生労働省「2024年人口動態統計(確定数)」
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この記事を書いた人

消化器内科医(卒後20年)
市中病院で内視鏡・炎症性腸疾患・消化器がん化学療法を専門に診療
消化器病学会専門医/消化器内視鏡学会専門医/総合内科専門医

むずかしい医学を、やさしい言葉で

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