はじめに
「腸活のために食物繊維をたくさん摂っているのに、お腹の調子がいまいち」「食物繊維を増やしたら、かえって便秘がひどくなった気がする」──そんな経験はありませんか。
結論を先にお伝えします。日本人の大多数にとって、食物繊維は「摂りすぎ」より「不足」が問題です。 ただし、一部の方や一部の状況では、摂り方を誤ると逆効果になることがあります。
この記事では、消化器内科医として20年以上の臨床経験をふまえ、以下の点を順にお伝えします。
- 食物繊維の最新の目標量(2025年版・厚生労働省)
- 「摂りすぎ 逆効果」と言われる本当の理由
- 摂りすぎたときに現れるサインと注意が必要な人
- 食物繊維と上手に付き合うコツ
「腸活なのに調子が悪い」を解消するヒントになれば幸いです。
結論:日本人の大多数は「摂りすぎ」より「不足」が問題

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が定める食物繊維の目標量を、日本人の平均摂取量は十分に満たしていません(具体的な数値は次の章で解説)(参考1)。
つまり、「食物繊維を摂りすぎている」という人は、実は少数派なのです。ただし、特定の体質・疾患の方や、サプリ・トクホを多用する方の場合は、摂り方を誤ると逆効果になることがあります。
この記事では、まず食物繊維の最新の目標量を確認した上で、「逆効果」と言われる本当の理由と、注意が必要なケースを順に解説します。
食物繊維の最新の目標量はどれくらい?

成人男性20g/日以上、女性18g/日以上(2025年版)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の食物繊維目標量を以下のように設定しています(参考1, 参考3)。
- 成人男性:1日20g以上
- 成人女性:1日18g以上
理想は1日25g以上(WHO推奨)
健康日本21アクション支援システムでは、「食物繊維の理想的な摂取量は成人で1日25g以上」と明記されており、世界保健機関(WHO)のガイドラインでもこの量を摂取することが推奨されています(参考1)。
ただし、現状の摂取量との乖離が大きいため、日本では実現可能性を考慮して、男性20g・女性18gという目標量が設定されています(参考1)。
日本人の現状:平均18.1g/日
厚生労働省の健康日本21アクション支援システムによると、令和6年国民健康・栄養調査の結果では、日本人成人(20歳以上)における食物繊維の摂取量の平均値は1日18.1gでした(参考1)。
この数値を、目標量・理想値と比較してみます。
- 女性の目標量(18g以上)→ 平均18.1gでわずかに達成
- 男性の目標量(20g以上)→ 未達
- WHO推奨の理想値(25g以上)→ 大きく未達
つまり、男性は目標量にも届いておらず、男女ともに理想値である25gには大きく届いていない状況です。
1955年は20g以上摂れていた
参考までに、健康日本21アクション支援システムには「1955年では、日本人は一人あたり1日20g以上の食物繊維を摂っていました」と記載されています(参考1)。穀類・いも類・豆類の摂取量が減ったことで、現代日本人の食物繊維量が低下したと考えられます。
なぜ「食物繊維 摂りすぎ 逆効果」と言われるのか

ここまでお伝えしたとおり、多くの日本人にとって食物繊維は「不足」が問題です。それでも「摂りすぎ 逆効果」と検索される背景には、以下の3つの理由があると考えられます。
理由1:個人差で「お腹のトラブル」が起こることがある
ここから先は、医学的な論理に基づく推論としてお読みください。
食物繊維は、人の消化酵素で消化されず、大腸まで届く食品成分です(参考1)。大腸内で腸内細菌に利用される際にガスが発生したり、便のかさを増やしたりする働きがあります(参考1)。
このため、急に大量の食物繊維を摂ると、人によっては腹部膨満感や軟便などの一時的な不調が起こりうると考えられます。
理由2:過敏性腸症候群(IBS)では食物繊維で症状が悪化することがある
これは個人差ではなく、明確に医学的に認められている事実です。
日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)」では、IBS患者に対して、症状を誘発しやすい食品を控える食事指導が提案されています(推奨度:弱、エビデンス:B)(参考4)。
特に近年注目されている「低FODMAP食」では、発酵性のある糖類を含む食品を一時的に控えることでIBS症状が改善することが報告されています(参考4)。高FODMAP食品の中には、玉ねぎ・小麦・豆類など食物繊維が豊富な食品も含まれます。
つまり、IBSの方にとっては「腸に良いはずの食物繊維」が、かえって腹痛・膨満・下痢を引き起こす可能性があるのです。
理由3:サプリ・トクホで気づかないうちに摂りすぎることがある
特定保健用食品(トクホ)の関与成分として、難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維が広く使われています。
健康日本21アクション支援システムでは、食物繊維について「特定保健用食品の、身体の生理的機能に影響を与える関与成分として『おなかの調子を整えます』の表示が認められています」と記載されています(参考1)。
ただし、複数のトクホやサプリを併用すると、知らないうちに摂取量が増えてしまう可能性があります。これは医学的な推論として、注意点に値するでしょう。
食物繊維を摂りすぎたサインとは【消化器内科医の視点】

以下は、医学的な論理と臨床経験に基づく医師の見解としてお読みください。資料1〜4で明示されているサインのリストではなく、食物繊維の生理作用から導かれる症状です。
サイン1:腹部膨満感・ガスが増える
食物繊維は大腸で腸内細菌に分解される際にガスを産生します(参考1)。急に摂取量を増やすと、お腹の張りやおならが増えることがあります。
サイン2:軟便・下痢
水溶性食物繊維は便を柔らかくする働きがあります。摂りすぎると、特に水溶性食物繊維が多い場合、便が緩くなることがあります。
サイン3:かえって便秘が悪化することも
意外に思われるかもしれませんが、不溶性食物繊維を急に増やすと、水分が足りない状態では便が硬く大きくなり、かえって出にくくなることがあります。これは便秘タイプによっては逆効果になるパターンとして、消化器内科の臨床現場でしばしば経験されます。
これらのサインは個人差が大きく、現れ方も人により異なります。気になる症状があれば、医療機関への相談をお勧めします。
こんな人は食物繊維の摂り方に注意

1. 過敏性腸症候群(IBS)の人
前述のとおり、日本消化器病学会のガイドラインで食事指導が提案されています(参考4)。自己判断で食物繊維を増やすより、医師や管理栄養士の指導を受けることをお勧めします。
2. 炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)の活動期の人
活動期には消化管に炎症があるため、食物繊維の摂り方には注意が必要です(医師の臨床的見解)。主治医の指示に従ってください。
3. 腸閉塞・腸狭窄を指摘されている人
医師から食物繊維制限を指示されている方は、自己判断で増やさないでください(医師の臨床的見解)。
4. サプリ・トクホを複数併用している人
製品ごとの摂取目安を守り、複数の製品を併用する場合は合計量に注意しましょう。
5. 急に食物繊維を増やそうとしている人
健康日本21アクション支援システムには「食物繊維については、まずは1日あたりプラス3〜4gを目安に、無理のない範囲で積極的に摂取するとよいでしょう」と記載されています(参考1)。急激な増量ではなく、少しずつ増やすのがコツです。
食物繊維との上手な付き合い方──消化器内科医の3つのアドバイス

アドバイス1:まずは食事から、サプリは補助的に
健康日本21アクション支援システムでは、効率的に食物繊維を摂る方法として、主食を麦ごはん・胚芽米ごはん・全粒小麦パン・ライ麦パン・そばなどに置き換えることが紹介されています(参考1)。
また、大麦(押し麦)、そば、さつまいも、さといも、糸引き納豆、おから、いんげん豆、あずき、切り干し大根、ごぼう、ブロッコリー、モロヘイヤ、しいたけ、ひじき、りんごなどには、1食あたり2〜3gの食物繊維が含まれていると記載されています(参考1)。
サプリやトクホは便利ですが、まずは食事からの摂取を基本にすることをお勧めします。
アドバイス2:1日プラス3〜4gから無理なく始める
繰り返しになりますが、健康日本21アクション支援システムの推奨どおり、1日プラス3〜4gの目安で少しずつ増やすのが安全です(参考1)。
アドバイス3:お腹の調子と相談しながら調整する
食物繊維への反応は人それぞれです。「腸活=食物繊維を多く摂れば良い」と単純に考えず、自分のお腹の声を聞きながら量・種類を調整することが大切です。
よくある質問

Q1. 食物繊維は1日何グラムまで摂っていい?
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食物繊維の耐容上限量は設定されていません(参考3)。一般的な食事から食物繊維を摂りすぎることは稀ですが、サプリやトクホを大量に併用する場合は、各製品の摂取目安を守ることが大切です。
Q2. 子どもや高齢者も同じ目標量?
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢別に目標量が設定されています(参考3)。子どもや高齢者の目標量は成人と異なるため、各年代別の基準を参考にしてください。
Q3. 腸活でヨーグルトと一緒に食物繊維を摂っても大丈夫?
健康日本21アクション支援システムでは、食物繊維が腸内の善玉菌に利用される「プレバイオティクス」として働き、短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸・プロピオン酸)の産生を促すことが説明されています(参考1)。基本的にはヨーグルトとの併用は問題ありません。ただしIBSの方は、ヨーグルトや特定の食物繊維が逆効果になる場合があるため、医師にご相談ください。
まとめ:「逆効果」は一部の話。多くの人にとって食物繊維は強い味方

最後に、この記事の要点を整理します。
- 食物繊維の目標量は成人男性20g/日以上、女性18g/日以上(2025年版)(参考1, 参考3)
- 日本人の平均摂取量は18.1g/日で、多くの人がまだ不足している(参考1)
- 「摂りすぎ 逆効果」は、IBS患者、活動期の炎症性腸疾患、腸閉塞・狭窄がある人、サプリ併用者など、特定の方に該当する話
- 急な増量は不調の原因になるため、1日プラス3〜4gから無理なく始めるのがコツ(参考1)
- まずは食事から、サプリは補助的に活用する
「腸活で食物繊維をたくさん摂ろう」という発信が世の中にあふれていますが、自分の体質と相談しながら無理なく続けることが、結局のところ最も効果的です。
ご自身のお腹の調子を観察しながら、少しずつ食物繊維を増やしてみませんか。
参考文献
- 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食物繊維の必要性と健康」(最終更新:2026年2月16日) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-001.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」(用語辞典) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
- 日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf
本記事は2026年5月時点で実在し公開されている上記の公的機関・学会の資料に基づいて執筆しています。医学的な解釈・推論にあたる箇所は、その旨を本文中に明示しています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の症状や治療方針の決定は、必ず主治医の判断に従ってください。

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