健診の結果を見ると、大腸がん検診の欄に「1回目(+)、2回目(-)」。
「2回のうち1回だけなら、たまたまじゃないの?」
「2回目は陰性なんだから、大丈夫な気がする」
「逆に、2回とも陽性だった私は、かなり危ないってこと?」
便潜血検査は2日分の便を調べるため、結果の組み合わせによって受け止め方に迷う方がとても多い検査です。
先に結論をお伝えします。
1日だけ陽性でも、2日とも陽性でも、次にやることは同じ「大腸カメラ」です。
ただし、がんが見つかる割合は、2日とも陽性のほうがはっきり高いことがわかっています。この記事では、日本のデータをもとに「何が違って、何が同じなのか」を整理します。
この記事の結論(先に知りたい方へ)
- 便潜血検査の「1回目・2回目」は、2日に分けて採った便のこと。どちらか1日でも陽性なら「要精密検査」です
- 日本の調査では、がんが見つかった割合は2日とも陽性で約12%、1日だけ陽性で約2%
- 1日だけ陽性でも、陽性でない人より、がんが見つかる割合は高い
- 「1日だけ陽性」の中にも、進行した腫瘍が隠れている人がいる(オランダの研究では、結果が分かれた人の約5人に1人)
- 自分でもう一度便潜血を受けて陰性でも、大腸カメラの代わりにはなりません
- 2日とも陽性でも、大腸カメラで「異常なし」や「ポリープだけ」で終わる人のほうが多いです
陽性になったときの全体的な確率を知りたい方は、先にこちらをどうぞ。
→ 便潜血が陽性で怖い…大腸がんの確率はどれくらい?医師が解説
便潜血検査は「2日分」を調べる検査
1回目・2回目は「2日に分けて採った便」のこと
健診や自治体の大腸がん検診で行う便潜血検査は、多くが「2日法」です。
別々の日に1回ずつ、合わせて2日分の便を採って提出します。結果の「1回目」「2回目」は、1日目の便、2日目の便という意味です。同じ便を2回調べているわけではありません。
便潜血検査は、便に混ざった目に見えないごく少量の血液を見つける検査です。大腸のポリープやがんは、便がこすれたときなどに少し出血することがあり、その血液をとらえます。
どちらか1日でも陽性なら「要精密検査」になる理由
2日法では、2日のうち1日でも陽性なら「要精密検査」になります。2日とも陽性でなければ精密検査が不要、という決まりではありません。
なぜ2日分を調べるのかというと、ポリープやがんは毎日出血しているわけではないからです。1日分だけだと、たまたま出血していない日の便を採ってしまい、見逃すことがあります。2日分を調べることで、その見逃しを減らしているのです。
つまり、2日法は「どちらか1日でも血が混ざっていたら、念のため大腸の中を見ましょう」という考え方でできている検査です。1日だけの陽性を「たまたま」と考えてしまうと、2日法の意味がなくなってしまいます。
便潜血検査の精度や、見逃しが起こるしくみは、こちらでくわしく解説しています。
→ 「便潜血検査は意味ない」は誤解|精度・限界・正しい活用法を消化器内科医が解説
「1日だけ陽性」と「2日とも陽性」、がんの見つかる確率の違い
2日とも陽性なら、がんが見つかったのは約8人に1人
東京の内視鏡クリニックで、大腸カメラを受けた約8,700人を調べた研究があります(Toyoshima ら、2021年)。大腸カメラを受けたきっかけごとに、がんが見つかった割合を比べたものです。
| 大腸カメラを受けたきっかけ | 人数 | がんが見つかった割合 | そのうち、粘膜より深く広がったがん |
|---|---|---|---|
| 便潜血 2日とも陽性 | 264人 | 12.1% | 8.3% |
| 便潜血 1日だけ陽性 | 1,018人 | 1.9% | 0.3% |
| 便潜血以外(症状・検診・経過観察など) | 7,442人 | 0.4% | 0.2% |
※「がん」には、粘膜の中にとどまるごく早期のがんも含みます。
2日とも陽性だった人では、約8人に1人にがんが見つかりました。 1日だけ陽性の人と比べると、6倍ほど高い割合です。
さらに、2日とも陽性の人で見つかったがんは、進んだ段階のものが多い傾向がありました。1日だけ陽性の人で見つかったがんは、ほとんどが粘膜の中にとどまるごく早期のものでした。
1日だけ陽性でも、陽性でない人より高い
一方で、見落とさないでほしいのは表のいちばん下の行です。
1日だけ陽性の人のがんが見つかった割合(1.9%)は、便潜血以外の理由で大腸カメラを受けた人(0.4%)の約5倍でした。
「2日とも陽性に比べれば低い」のは確かです。でも、「1日だけなら心配ない」わけではありません。早期のうちに見つかる可能性が高いということは、むしろ1日だけ陽性の段階で大腸カメラを受ける大きなメリットです。
なお、この研究はひとつのクリニックのデータで、大腸カメラを受けた人だけを調べたものです。数字は目安として受け止めてください。
1日だけ陽性でも大腸カメラが必要な理由
ポリープやがんは、毎日出血するわけではない
先ほどお話ししたとおり、ポリープやがんからの出血は、日によってあったりなかったりします。
1日目は出血していて陽性、2日目は出血していなくて陰性──ということは、病変があっても十分に起こります。「2回目が陰性だったから、1回目は間違い」とは考えられないのです。
結果が分かれた人の約5人に1人に、進行した腫瘍
オランダで、約2万1千人に同じ便を2種類の便潜血検査で調べてもらった研究があります(Wieten ら、2019年)。
2つの検査の結果が分かれた(片方だけ陽性だった)人のうち、約5人に1人(21%)に、大腸カメラで進行した腫瘍が見つかりました。ここでいう進行した腫瘍とは、がんや、がんになりやすい大きめのポリープのことです。
そして、進行した腫瘍が見つかった人全体のうち、約4人に1人(27%)は、片方の検査だけが陽性でした。
この研究は「2日分」ではなく「同じ便を2つの検査で調べた」ものなので、日本の2日法とまったく同じではありません。それでも、片方だけ陽性という結果の中に、見つけるべき病変が少なからず含まれていることがわかります。研究チームも「結果が分かれた人も大腸カメラを受けるべき」と結論づけています。
陽性のまま大腸カメラを受けないリスクについては、こちらでデータとともに解説しています。
→ 便潜血が陽性なのに放置するとどうなる?大腸カメラを受けないリスクと「便の再検査」ではダメな理由を消化器内科医が解説
「健診で陽性→自分でもう一度検査して陰性」はどう考える?
「健診で1日だけ陽性だったので、念のため自分でもう一度便潜血を受けたら、今度は2日とも陰性だった。だからもう大丈夫」──外来で、とてもよく聞くお話です。
気持ちはよくわかります。大腸カメラより便の検査のほうが手軽ですし、「陰性」の結果を見ればほっとします。
でも、もう一度便潜血を受けて陰性になっても、大腸カメラの代わりにはなりません。
国立がん研究センターの「がん情報サービス」でも、はっきりとこう書かれています。
便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりになりません。
(国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」より)
理由は、ここまでお話ししたことと同じです。出血は日によってあったりなかったりするので、検査をくり返せば、いつかは陰性の日に当たります。陰性が出たことで、最初の陽性が「なかったこと」になるわけではありません。
健診で陽性が出たら、その時点で「大腸カメラを受ける」が次の一歩です。自分でもう一度便潜血を受けてしまった方も、今から大腸カメラを予約すれば大丈夫です。
2日とも陽性でも「異常なし」のことは多い
ここまで読んで、2日とも陽性だった方は不安が大きくなったかもしれません。
でも、先ほどの研究をもう一度見てください。2日とも陽性でも、9割近くの人には、がんは見つかっていません。実際に大腸カメラをしてみると、「ポリープを取って終わり」「とくに異常なし」という方のほうがずっと多いのです。
陽性になる「がん以外」の原因
便潜血が陽性になる原因は、がんだけではありません。
- 大腸ポリープ(がんになる前の段階のものを含む)
- 痔(いぼ痔・切れ痔)
- 大腸憩室(大腸の壁の一部が外側にふくらんだもの)
- 大腸の炎症(潰瘍性大腸炎、感染性の腸炎など)
- 便秘で硬い便が出たときの、肛門や腸の粘膜の小さな傷
とくに痔がある方は、2日とも陽性になることもあります。ただし、「痔のせい」かどうかは、大腸カメラで大腸の中を見ないとわかりません。
→ 便潜血陽性だけど痔がある…大腸カメラは必要?数値・切れ痔・毎年陽性の考え方を消化器内科医が解説
異常なしだった後の検診はどうする?
日本消化器内視鏡学会は、大腸カメラで「異常なし」と言われた方も、40歳以上なら年に1回の便潜血検査による検診を続けることを勧めています。「一度大腸カメラを受けたから、もう検診は卒業」ではありません。
ただし、とくに病気がなくても、くり返し便潜血が陽性になる方もいます。学会は、直近2回の大腸カメラで異常がなかった方の大腸がんのリスクは低いと考えられるとしたうえで、その後また陽性になったときに大腸カメラを受けるかどうかは、担当の医師と相談するよう勧めています。
迷ったときは、大腸カメラを担当した医師に「次はいつ、どの検査を受ければいいですか?」と聞いておくと安心です。
年代別の考え方(30代・40代・50代)
大腸がんは年齢とともに増える病気で、一般には40代から少しずつ増え、50代以降で多くなります。
- 30代で陽性だった方:年齢的には、がんが見つかる確率は高くありません。痔や炎症が原因のことも多い年代です。ただし、近年は若い世代の大腸がんが増えていることもわかっています。年齢を理由に先送りせず、大腸カメラを受けてください
- 40代で陽性だった方:大腸がんが少しずつ増えてくる年代です。はじめての大腸カメラになる方も多いでしょう。ポリープが見つかれば、その場で取れることもあります
- 50代以上で陽性だった方:大腸がんが多くなる年代です。1日だけ陽性でも、2日とも陽性でも、なるべく早めに予約を入れましょう
どの年代でも、血便が続く、便が細くなった、便秘と下痢をくり返す、体重が減ってきた、貧血を言われたといった症状がある場合は、検診の結果に関係なく、早めに消化器内科を受診してください。
若い世代の大腸がんについては、こちらで解説しています。
→ 若い世代の大腸がんが増加中|消化器内科医が最新研究をわかりやすく解説
【医師の視点】診察室でよく聞かれること
外来で、1日だけ陽性の方からいちばんよく聞かれるのは、「1回だけなんですけど、本当にカメラまで必要ですか?」という質問です。
私はいつも、「1回でも陽性が出たということは、その日の便に血が混ざっていた、ということです。その血がどこから来たのかを確かめるのが大腸カメラです」とお話ししています。
そして、「確率でいえば、何もない可能性のほうが高いですよ」とも、正直にお伝えします。何もなければ、それで安心できます。小さなポリープが見つかれば、その場で取って、将来のがんを防ぐことにつながります。
2日とも陽性で、不安そうに来られる方には、「確率は少し上がりますが、多くの方は大きな病気ではありません。そして、もし何か見つかっても、検診で見つかったということは、症状が出る前に見つかったということです」とお伝えしています。
1日だけでも、2日ともでも、大腸カメラを受けた時点で「わからない不安」は終わります。
大腸カメラが怖い方は、楽に受けるコツをまとめたこちらもどうぞ。
→ 大腸カメラの痛くない受け方と下剤の選び方を消化器内科医が解説
よくある質問(FAQ)
Q1. 1日目が陽性の場合と、2日目が陽性の場合で、意味は違いますか?
A. 違いはありません。どちらの日の便が陽性でも、「1日だけ陽性」として同じように考えます。1日だけ陽性なら、大腸カメラを受けてください。
Q2. 生理中に採った便が陽性でした。それでも大腸カメラは必要ですか?
A. 生理の血が混ざると陽性になることがあるため、生理中や生理の直後は、便の採取を避けるのが基本です。生理中に採った便で陽性になった場合は、自分で「生理のせい」と決めずに、まず消化器内科で医師に相談してください。
Q3. 1日だけ陽性の場合、どれくらい急いで受ければいいですか?
A. 症状がとくになければ、1〜2か月以内に予約すれば十分です。ただし、血便や便の変化などの症状がある場合は、早めに受診してください。陽性のあと1年近く先送りにすると、がんが進んだ状態で見つかる人が増えるという研究もあります。
Q4. 2日とも陽性でした。すぐに受けないといけませんか?
A. 1日だけ陽性の場合より、がんが見つかる割合は高くなります。症状がなくても、結果を見たらなるべく早めに予約を入れましょう。とはいえ、「明日でないと手遅れ」というものではありません。落ち着いて、受けやすい医療機関を選んでください。
Q5. 去年は陰性、今年は1日だけ陽性でした。たまたまですか?
A. 毎年の結果が変わることは、よくあります。去年が陰性でも、今年1日だけでも陽性なら、大腸カメラを受けてください。去年の陰性は、今年の陽性を打ち消すものではありません。
Q6. 大腸カメラの費用はどれくらいですか?
A. 精密検査としての大腸カメラは健康保険が使えます。3割負担の場合、観察だけなら5,000〜7,000円程度、組織の検査(生検)をすると8,000〜12,000円程度、ポリープを切除すると20,000〜30,000円程度が目安です。施設や地域、鎮静剤の有無などによって変わります。
まとめ
- 便潜血検査の「1回目・2回目」は、2日に分けて採った便のこと。1日でも陽性なら要精密検査です
- 日本の調査では、がんが見つかった割合は2日とも陽性で約12%、1日だけ陽性で約2%でした
- 1日だけ陽性でも、陽性でない人より、がんが見つかる割合は高いです
- 自分でもう一度便潜血を受けて陰性でも、大腸カメラの代わりにはなりません
- 2日とも陽性でも、がんが見つからない人のほうが多いです。怖がりすぎず、予約を入れましょう
1日だけの陽性も、2日とも陽性も、体が出してくれた「一度、大腸の中を見てね」というサインです。数字にふり回されすぎず、次の一歩として大腸カメラの予約を入れてください。
当日の流れや準備は、こちらで時系列にまとめています。
→ 大腸カメラ当日の流れ|朝の飲み物・薬・服装・持ち物と所要時間を消化器内科医が時系列で解説
参考文献・情報源
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html
- 日本消化器内視鏡学会「よくある質問:昨年大腸内視鏡検査を受けました。今年も受ける必要がありますか?」 https://www.jges.net/citizen/faq/large-intestine_04
- Toyoshima O, et al. Priority stratification for colonoscopy based on two-sample faecal immunochemical test screening: results from a cross-sectional study at an endoscopy clinic in Japan. BMJ Open. 2021;11(5):e046055. doi:10.1136/bmjopen-2020-046055
- Wieten E, et al. A quarter of participants with advanced neoplasia have discordant results from 2-sample fecal immunochemical tests for colorectal cancer screening.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2020;18(8):1805-1811.e1. doi:10.1016/j.cgh.2019.09.024 - Corley DA, et al. Association between time to colonoscopy after a positive fecal test result and risk of colorectal cancer and cancer stage at diagnosis.
JAMA. 2017;317(16):1631-1641. doi:10.1001/jama.2017.3634

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