早期残胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の長期成績: 多施設共同レトロスペクティブ研究

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背景

早期残胃癌(ERGC)に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の良好な長期成績は、先進施設の単施設研究で報告されている。しかし多施設のデータベースを用いて長期転帰を検討した研究はない。
本研究は大規模な多施設データベースを用いて前述のアプローチの長期予後を検討することを目的とした。

方法

この後方視的多施設コホート研究では、2009年4月から2019年3月までにERGCに対してESDを受けた256病変の242例を12施設で対象とした。これらの患者の長期転帰をKaplan-Meier法で調査し、治癒可能性、追加治療、または病院カテゴリーと生存期間との関係をlog-rank検定を用いて評価した。

結果

追跡期間中央値48.4ヵ月の5年全生存率は81.3%、5年胃癌特異的生存率は98.1%であった。
追加手術を行わなかった内視鏡的治癒(eCura)C-2症例の生存期間は、追加手術を行ったeCura A/B/C-1症例およびeCura C-2症例に比べて有意に短かった。
全生存期間および胃癌特異的生存率は、high vulume hospitalとnon-high volume hospitalとの間に有意差はなかった。

Fig.2. 早期残胃癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を受けた患者の全生存曲線と胃癌特異的生存曲線。
a 5年全生存率は81.3%。b 5年胃癌特異的生存率は98.1%。

結論

多施設データベースを用いたERGCに対するESDの胃がん特異的生存率は良好であった。
ERGCに対するESDは病院の症例数に関係なく広く適用可能である。
最新のガイドラインに従った管理が長期生存につながる。

感想

早期残胃癌に対するESDの成績が良好であることが示されました。残胃癌の場合、追加手術は残胃全摘になることが多く、術後に患者のQOLは大きく低下し、特に高齢者の場合には全摘により返って生命予後が短縮することもあります。一方、仮にESDで治癒切除ができれば治療後の患者のQOLが維持できるため、残胃癌の患者ではESDの意義はなおさら大きいです。

出典

Kazunori T, et al; Long-Term Outcomes of Endoscopic Submucosal Dissection for Early Remnant Gastric Cancer: A Retrospective Multicenter Study.
Digestion (2023) 104 (5): 381–390. https://doi.org/10.1159/000530218

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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