クリップ縫縮しても大きなSSLの後出血は減らない

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背景と目的


鋸歯状ポリープは重要な大腸癌の前駆症状であり、ポリープ切除後の出血率が高い近位結腸に最も多く存在する。大型鋸歯状ポリープ(LSP)切除のベストプラクティスの指針となる臨床試験のエビデンスは限られている。

方法


多施設共同試験において、EMRを受けた大型(20mm以上)の非有茎性ポリープの患者を、切除基部のクリッピングを行う群と行わない群(対象群)に無作為に割り付けた。
この解析では,試験対象のポリープを組織学的サブタイプ(鋸歯状病変(SSL)または過形成ポリープ(HP))または腺腫性に分類し,クリップ群と対照群の比較を行った.
主要アウトカムは,大腸内視鏡検査後 30 日以内の処置後の重篤な出血とした。

結果


合計179人・199 LSP(SSL191例、HP8例)および730人・771腺腫性ポリープが研究に参加した。
全体として、LSPでは5人(2.8%)が後出血を経験したのに対し、腺腫では42人(5.8%)であった。LSPの患者では、クリップ群と対照群の間で出血率に差はなかった(それぞれ2.3% vs 3.3%、差1.0%;P = NS)。
しかし、腺腫性ポリープを有する患者では、クリップは処置後の出血のリスク(3.9% vs 7.6%、差3.7%;P = 0.03)および全体の重篤な有害事象(5.5% vs 10.6%、差5.1%、P = 0.01)と関連があった。

結論


EMRで切除されたLSPの後出血リスクは低く、このグループには切除基部の予防的クリッピングの明確なベネフィットはない。
本研究はEMR後の内視鏡的クリッピングの有益性は、近位結腸に位置する2cm超の腺腫性ポリープに特有である可能性を示している。

感想


SSLの場合には腺腫性ポリープの場合と比べてクリップによる後出血の効果が見られなかったのは、SSLには腺腫性ポリープほどの太い血管が少ないことも影響しているかもしれません。
SSLだと分かっていても2cm以上の病変の切除後にクリップをしないのは勇気が要りますね。
もっとも、ESDではもっと大きな切除後潰瘍底にクリップをしていませんが。
EMR後出血の予防に、クリップの代わりに潰瘍底の血管を凝固するのは有効なのか、興味があります。

論文

Seth D. Crockett, et al. Clip Closure Does Not Reduce Risk of Bleeding After Resection of Large Serrated Polyps: Results From a Randomized Trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2022 Aug;20(8):1757-1765.e4.

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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