虚血性腸炎の症状と予防策

2023年12月29日2024年10月28日

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はじめに

今回は虚血性腸炎という疾患について説明します。

虚血性腸炎とは何か？
虚血性腸炎は、大腸の血液供給が不足し（虚血）、その結果として引き起こされる病気です。
この病気は、大腸の血流が悪化し、粘膜に炎症や潰瘍が生じることによって特徴付けられます。

血液が不足する原因には、動脈硬化性疾患、つまり糖尿病、高血圧、脂質異常症などが挙げられます。

虚血性腸炎の基本情報

症状

虚血性腸炎の症状は数回の下痢の後の、突然の高度の腹痛と血便です。
さらに吐き気や、嘔吐、冷や汗が出ることもあります。

原因

最も一般的な原因

虚血性腸炎の最も一般的な原因は、大腸に栄養を供給する血管の血流低下です。
これは、動脈硬化などによる血管の機能不全が原因で起こります。

リスクファクター

主なリスクファクターとしては、便秘や特定の薬物の使用が挙げられます。
また、60代以上の高齢者に多く見られる傾向があります。

診断と検査

初期診断
- 診察と問診：
  虚血性腸炎の診断プロセスは、まず医師による詳細な診察と問診から始まります。
  患者の症状の出方、発症の時の状態、腹痛の部位、下痢や血便の有無などの情報が収集されます。
- 使用される検査方法：
  初期診断には血液検査と腹部エコー検査または腹部CT検査が行われます。
- 血液検査により炎症や貧血の程度を調べることができます。
  腹部エコーや腹部CT検査により虚血状態の腸管が腫れている所見を確認することができます。
確定診断
- 専門的検査：
  確定診断は、大腸内視鏡検査により炎症や潰瘍の程度や範囲を確認することです。
  
  また、疑わしい部分の組織を採取して病理検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。
  
  ただし虚血性腸炎の急性期は、大腸内視鏡検査を行うと患者さんの痛みが非常に強いです。
  そのため現病歴および腹部エコー検査またはCT検査で典型例である場合には、急性期には大腸内視鏡検査を行わず、退院後に大腸内視鏡検査を行うこともあります。
  
  まれに大腸がんが原因で虚血性腸炎になることもあるため、最近大腸内視鏡検査を受けていない患者さんでは、退院後に必ず内視鏡検査で大腸がんがないことを確認する必要があります。

治療方法

腸管安静：
虚血性腸炎の治療では、禁食と補液が基本です。
この保存的治療でほとんどの患者さんは3,4日で腹痛と出血は軽快します。
生活習慣の改善：
この病気は再発しやすく、予防のためには生活習慣の改善が重要です。
具体的には適切な食生活の維持、定期的な運動、ストレスの管理、便秘の予防と改善などです。

予防と自己管理

予防と自己管理
- 食生活の改善
  - 推奨される食品：
    健康的な食生活においては、バランスの取れた食事が重要です。
    これには、さまざまな種類の野菜や果物、全粒穀物、低脂肪のタンパク質源（魚、豆腐、鶏肉など）、良質な脂肪（オリーブオイル、アボカドなど）の摂取が含まれます。
  - 避けるべき食品：
    食塩の取り過ぎ、高脂肪食品（特に動物性脂肪）、加工食品、砂糖の多い食品は避けた方が良いです。
    これらは、体内での炎症を促進し、健康状態を悪化させる可能性があります。
- 運動と生活習慣
  - 適度な運動は全体的な健康を維持し、病気の予防に寄与します。
    週に数回、中程度から激しい運動を行うことが推奨されます。
    他には十分な睡眠、禁煙、アルコールの適量摂取なども重要です。

まとめ

虚血性腸炎の基本情報、症状、診断方法、治療法について詳しく説明してきました。

虚血性腸炎は大腸の血流不足によって引き起こされ、腹痛、血便、下痢などの症状が特徴的です。
診断は詳細な問診、血液検査、CT検査、大腸内視鏡検査を通じて行われ、治療は基本的には保存的加療です。

また、予防においては、バランスの取れた食生活と規則正しい運動が重要です。
特に、高脂肪食品や加工食品の摂取は避け、野菜や果物、全粒穀物などを積極的に取り入れることが大事です。

最後までお読みいただきありがとうございました！

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この記事を書いた人

hashibiroh

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み，現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療，炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療，消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医，消化器内視鏡学会専門医，総合内科専門医を所持しています。

このブログでは，一般の方向けの消化器疾患の説明と，消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。