便秘の悩みを解消!原因と対策を専門医が徹底解説

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目次

1. 便秘とは?定義と診断基準

便秘は多くの人が経験する一般的な症状ですが、医学的にはどのように定義され、診断されるのでしょうか。ここでは、便秘の医学的定義と診断基準について詳しく解説します。

便秘の医学的定義


2017年に発表された慢性便秘症診療ガイドラインによると、便秘は以下のように定義されています1:


「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」


この定義は、単に排便回数の減少だけでなく、排便の質的な側面も考慮しています。つまり、排便回数が正常でも、排便時に困難を感じたり、残便感があったりする場合も便秘に含まれます1。

便秘の診断基準(ローマIV基準)

便秘の診断には、国際的に広く使用されているローマIV基準が用いられます。この基準は2016年に更新され、以下の条件を満たす場合に機能性便秘と診断されます1, 3:

  1. 以下の症状のうち2つ以上が該当する:
    • 排便の25%以上でいきみがある
    • 排便の25%以上で兎糞状便または硬便がある
    • 排便の25%以上で残便感がある
    • 排便の25%以上で直腸肛門の閉塞感あるいはつまった感じがある
    • 排便の25%以上で用手的に排便促進の対応をしている(摘便、骨盤底圧迫など)
    • 排便回数が週に3回未満
  2. 下剤を使用しない場合、軟便になることは稀である
  3. 過敏性腸症候群(IBS)の診断基準を満たさない

これらの症状が6ヵ月以上前から存在し、最近3ヵ月間は上記の基準を満たしている場合に、慢性機能性便秘と診断されます1, 3

慢性便秘症の診断プロセス

実際の臨床現場では、便秘の症状で受診する患者の診断において、まず二次性の便秘を除外することが重要です7。以下の点を考慮します:

  1. 大腸がんなどによる狭窄性器質性疾患の有無
  2. 症候性便秘の可能性
  3. 薬剤性便秘の有無

また、便秘症状をきっかけに大腸内視鏡検査を行うことで、便秘の原因となる器質性狭窄がなくても、大腸がんやその他の疾患の早期発見につながる可能性があります7

注意点

ただし、便秘の症状が新たに出現した場合や、50歳以上の方、体重減少や直腸出血がある場合などは、大腸がんなどの器質的疾患の可能性を考慮し、大腸内視鏡検査などの精密検査が推奨されます1, 3

便秘は単なる不快な症状ではなく、生活の質に大きな影響を与える可能性がある状態です。症状が持続する場合は、適切な診断と治療を受けるために医療機関を受診することが重要です1, 2, 3

1 Chronic constipation: Current treatment options – PMC – NCBI
2 ACG and AGA guideline on chronic constipation management is first …
3 Chronic Constipation: An Evidence-Based Review
7 便秘・慢性便秘症について – 日本消化管学会

2. 便秘の種類と原因

2023年に改訂された「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」に基づいて、慢性便秘症の分類を説明します。

慢性便秘症の分類

慢性便秘症は大きく以下のように分類されます:

1. 原因による分類

  1. 器質性便秘
    • 狭窄性便秘
    • 非狭窄性便秘
  2. 機能性便秘
    ・異常がないにもかかわらず便秘症状が現れるタイプの便秘

2. 症状による分類

  1. 排便回数減少型
    • 週3回未満の排便
  2. 排便困難型
    • 直腸内の糞便の排出が十分でなく残便感がある状態

3. 病態による分類

  1. 大腸通過正常型
    • 主な原因は食物繊維摂取不足
  2. 大腸通過遅延型
    • 食物繊維の摂取量を増やしても改善しないことが多い
  3. 便排出障害
    • 機能性便排出障害(骨盤底筋協調運動障害、腹圧低下、直腸感覚低下など)
    • 器質性便排出障害(直腸瘤、直腸重積など)

このガイドラインでは、便秘を「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義しています。
また、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも種々の支障をきたしうる病態」と定義されています1, 2

この新しい分類は、便秘の多様な病態を考慮し、より適切な診断と治療方針の決定を可能にすることを目的としています。

3. 便秘がもたらす健康への影響

便秘は単なる不快な症状ではなく、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。

腹痛や腹部膨満感

便秘が続くと、腸内に便が滞留することで腹痛や腹部膨満感が生じます。これらの症状は患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。

  • 腹痛:便が腸内に長時間滞留することで、腸管が過度に伸展され、痛みを感じます。
  • 腹部膨満感:腸内のガスや便の貯留により、おなかが張った感覚を覚えます。

これらの症状は、便秘の重症度や持続期間に比例して悪化する傾向があります。

肌トラブル

便秘と肌トラブルの関連性については、近年注目されています。便秘が続くと、以下のような肌への悪影響が報告されています:

  1. ニキビの増加:腸内環境の悪化により、体内の毒素が皮膚から排出されようとして、ニキビが増加する可能性があります。
  2. 肌の乾燥:便秘による水分バランスの乱れが、肌の乾燥を引き起こすことがあります。
  3. 肌のくすみ:腸内環境の悪化が血行不良を招き、肌のくすみの原因となることがあります。

これらの肌トラブルは、便秘の改善とともに軽減される傾向にあります。

痔の悪化

便秘は痔の主要な原因の一つとされています。硬い便を排出しようとして過度に力むことで、以下のような痔の症状が悪化または新たに発症する可能性があります:

  • 内痔核:肛門内の静脈が腫れ上がる状態
  • 外痔核:肛門の外側の静脈が腫れ上がる状態
  • 裂肛:肛門の粘膜に裂け目ができる状態

痔の悪化は、さらなる排便困難を引き起こし、便秘を悪化させるという悪循環に陥る可能性があります。

うつや不安感の増大

便秘とメンタルヘルスの関連性も近年注目されています。慢性的な便秘は以下のような心理的影響をもたらす可能性があります:

  1. うつ症状の増加:便秘による不快感や生活の質の低下が、うつ症状を引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
  2. 不安感の増大:排便の困難さや社会生活への影響を心配することで、不安感が高まることがあります。
  3. ストレスの蓄積:便秘による身体的・精神的負担が、ストレスを増加させる要因となります。

これらの心理的影響は、便秘症状の改善とともに軽減される傾向にありますが、重症例では専門的な心理サポートが必要となる場合もあります。

便秘がもたらすこれらの健康への影響は、単に不快な症状というだけでなく、全身の健康状態に関わる重要な問題であることを認識する必要があります。適切な生活習慣の改善や医療介入により、これらの影響を最小限に抑えることが可能です。

4. 便秘の自然な解消法

便秘の自然な解消法には、食事療法、運動療法、生活習慣の改善が挙げられます。

食事療法(食物繊維、水分摂取)

食事療法は便秘改善の基本となる重要なアプローチです。

食物繊維の摂取

食物繊維は便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促進する効果があります。

  • 推奨摂取量:1日20~35g
  • 主な食物繊維源:
    • 水溶性食物繊維:海藻類、里芋、山芋、モロヘイヤ、完熟果物(りんご、みかんなど)
    • 不溶性食物繊維:豆類、ごぼう、さつまいも、じゃがいも、ひじき、昆布、きのこ類、野菜(トマト、キャベツ、セロリなど)

食物繊維の摂取を急激に増やすと腹部膨満感が生じる可能性があるため、徐々に増やしていくことが推奨されます。

水分摂取

適切な水分摂取は便を軟らかくし、排便を促進します。

  • 推奨摂取量:1日1.5~2L
  • 注意点:カフェインを含む飲料(コーヒー、紅茶など)は利尿作用があるため、水分摂取量にはカウントしません。

運動療法

定期的な運動は腸の蠕動運動を促進し、便秘の改善に効果があります。

  • 推奨される運動:
    • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳など
    • 腹筋運動:腹筋を鍛えることで排便時の腹圧を高められます
  • 運動の頻度:週3回以上、1回30分以上の運動が推奨されます

運動は食後に行うと、より効果的に腸の動きを促進します。

生活習慣の改善(トイレ習慣など)

生活習慣の改善は便秘解消の重要な要素です。

規則正しい排便習慣

  • 毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつける
  • 朝食後30分以内にトイレに行くことが効果的
  • 便意を感じたら我慢せずにトイレに行く

トイレ環境の整備

  • リラックスできる環境を整える
  • 和式トイレよりも洋式トイレの方が排便しやすい
  • 足台を使用し、膝を高くすることで直腸肛門角が開き、排便が容易になる

ストレス管理

ストレスは腸の動きに悪影響を与えるため、ストレス管理も重要です。

  • リラクゼーション技法の実践(深呼吸、瞑想など)
  • 十分な睡眠の確保
  • 趣味や運動によるストレス解消

これらの自然な解消法を組み合わせて実践することで、多くの場合、便秘症状の改善が期待できます。ただし、症状が長期間続く場合や、急激な変化がある場合は、医療機関での診察を受けることが推奨されます。

5. 便秘に効果的な食品と栄養素

便秘の改善には、適切な食事と栄養摂取が重要です。便秘に効果的な食品と栄養素について詳しく解説します。

プロバイオティクス・プレバイオティクス

プロバイオティクスは腸内環境を整える生きた微生物であり、便秘の改善に効果があることが示されています。

  • 効果的なプロバイオティクス菌株:
    • Lactobacillus casei strain Shirota
    • Bifidobacterium lactis
    • Bifidobacterium animalis
    • Lactobacillus reuteri
    • Lactococcus lactis
    • Lactobacillus plantarum
    • Bifidobacterium bifidum G9-1

これらのプロバイオティクスは、排便回数の増加や腹部症状の改善、腸管通過時間の短縮に寄与することが複数のメタアナリシスで示されています12。プレバイオティクスは、プロバイオティクスの栄養源となる難消化性食物繊維です。イヌリンやフラクトオリゴ糖などが代表的で、これらを摂取することで腸内細菌叢を改善し、便秘の緩和につながる可能性があります3

食物繊維が豊富な食品

食物繊維は便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促進する効果があります。2023年の慢性便秘症ガイドラインでは、1日の推奨摂取量を20~35gとしています4。食物繊維には水溶性と不溶性があり、両方をバランスよく摂取することが重要です。

  • 水溶性食物繊維が豊富な食品:
    • 海藻類
    • 里芋、山芋
    • モロヘイヤ
    • 完熟果物(りんご、みかんなど)
  • 不溶性食物繊維が豊富な食品:
    • 豆類
    • ごぼう、さつまいも、じゃがいも
    • ひじき、昆布
    • きのこ類
    • 野菜(トマト、キャベツ、セロリなど)

便通を促す効果がある食品

  1. キウイフルーツ:
    キウイフルーツには食物繊維に加え、アクチニジンという酵素が含まれており、上部消化管の運動を促進する効果があります。1日2個の緑色キウイフルーツを摂取することで、排便回数の増加や便の軟化、排便の容易さの改善が報告されています5
  2. プルーン(乾燥プラム):
    プルーンには食物繊維(6.1g/100g)に加え、ソルビトール(14.7g/100g)が豊富に含まれています。これらの成分が便秘改善に寄与すると考えられています6
  3. オートミール:
    オートミールは水溶性食物繊維が豊富で、便を軟らかくし、排便を容易にする効果があります7
  4. チアシード:
    チアシードは水分を吸収して膨張し、便のかさを増やす効果があります。また、オメガ3脂肪酸も含まれており、腸の健康に寄与します8
  5. 発酵食品(ヨーグルト、ケフィアなど):
    これらの食品にはプロバイオティクスが含まれており、腸内環境の改善を通じて便秘の緩和に効果があります9

便秘の改善には、これらの食品を日々の食事に取り入れることが重要です。ただし、食物繊維の摂取量は徐々に増やしていくことが推奨されます。急激な増加は腹部膨満感などの不快症状を引き起こす可能性があるためです。

1 Karger.com. (2023). Evidence-Based Clinical Guidelines for Chronic Constipation 2023.
2 BMJ Open. (2023). Efficacy in bowel movement and change of gut microbiota on adult chronic constipation with probiotics-containing products: a systematic review and network meta-analysis.
3 NCBI. (2021). Diets for Constipation – PMC.
4 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. (2023).
5 Journals.lww.com. (2023). Consumption of 2 Green Kiwifruits Daily Improves Constipation and Abdominal Comfort.
6 NCBI. (2021). Diets for Constipation – PMC.
7 Piedmont.org. (2023). Five Foods That Help Relieve Constipation.
8 Healthline. (2023). 15 Healthy Foods That Help You Poop.
9 Medical News Today. (2023). 7 foods that can help you poop and relieve constipation.

6. 便秘に対する薬物療法

便秘の薬物療法は、2023年に発表された「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」に基づいて行われます。このガイドラインでは、様々な種類の便秘薬が紹介され、その効果と使用方法が詳細に記載されています。

緩下剤の種類と特徴

緩下剤は便秘治療の基本となる薬剤で、主に以下の種類があります:

  1. 浸透圧性下剤
    • 塩類下剤(酸化マグネシウム):腸内の水分量を増やし、便を軟らかくします。安全性が高く、長期使用が可能です。
    • 糖類下剤(ラクツロース):腸内細菌によって分解され、浸透圧を上げて水分を引き込みます。
    • ポリエチレングリコール(PEG):腸内で水分を保持し、便を軟化させます。小児から高齢者まで幅広く使用できます。
  2. 上皮機能変容薬
    • ルビプロストン:腸管上皮細胞の塩素チャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進します。
    • リナクロチド:腸管上皮細胞のグアニル酸シクラーゼC受容体を活性化し、水分分泌を促進します。
  3. 胆汁酸トランスポーター阻害薬
    • エロビキシバット:回腸での胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸内の水分量を増加させます。

刺激性下剤と浸透圧性下剤の違い

  1. 刺激性下剤
    • 作用機序:大腸の蠕動運動を直接刺激して促進します。
    • 代表的な薬剤:センノシド、ピコスルファートナトリウム
    • 特徴:効果が強く、比較的早く作用しますが、長期使用で耐性が生じる可能性があります。
    • 使用法:頓用(必要時のみ)での使用が推奨されています。
  2. 浸透圧性下剤
    • 作用機序:腸管内の浸透圧を上げ、水分を引き込むことで便を軟化させます。
    • 代表的な薬剤:酸化マグネシウム、ラクツロース、ポリエチレングリコール
    • 特徴:比較的穏やかな作用で、長期使用が可能です。
    • 使用法:継続的な使用が可能で、慢性便秘の基本治療薬として位置づけられています。

新しい便秘治療薬の紹介

近年、新しい作用機序を持つ便秘治療薬が登場し、治療の選択肢が広がっています:

  1. ルビプロストン
    • 作用:小腸の塩素チャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進します。
    • 特徴:便秘型過敏性腸症候群にも効果があります。
  2. リナクロチド
    • 作用:腸管上皮細胞のグアニル酸シクラーゼC受容体を活性化し、水分分泌を促進します。
    • 特徴:腹痛を伴う便秘型過敏性腸症候群に特に有効です。
  3. エロビキシバット
    • 作用:回腸での胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸内の水分量を増加させます。
    • 特徴:腸管運動も促進する効果があります。

これらの新薬は、従来の治療で効果不十分な場合に考慮されます。ガイドラインでは、これらの薬剤を「他の便秘症治療薬で効果不十分な場合に使用すること」と位置づけています。

便秘の薬物療法は、患者の症状や病態に応じて適切な薬剤を選択することが重要です。また、生活習慣の改善と併用することで、より効果的な治療が可能となります。

7. 便秘と腸内環境の関係

便秘と腸内環境は密接に関連しており、健康的な腸内環境を維持することが便秘の予防や改善に重要です。便秘と腸内環境の関係について詳しく解説します。

腸内細菌叢の重要性

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、人間の健康に重要な役割を果たしています。腸内には約1000種類、100兆個もの細菌が生息しており、これらの細菌は消化、免疫機能、さらには便通にも大きな影響を与えています1

  1. 便の形成と排泄: 腸内細菌は食物繊維を発酵させ、短鎖脂肪酸を産生します。この短鎖脂肪酸は腸の蠕動運動を促進し、便の形成と排泄を助けます2
  2. 腸管バリア機能: 健康的な腸内細菌叢は腸管バリア機能を強化し、有害物質の吸収を防ぎます。これにより、炎症や便秘のリスクが低下します3
  3. 免疫系の調整: 腸内細菌は免疫系と相互作用し、全身の炎症レベルに影響を与えます。慢性的な炎症は便秘のリスクを高める可能性があります4
  4. 神経伝達物質の産生: 一部の腸内細菌はセロトニンなどの神経伝達物質を産生し、腸の運動性に影響を与えます5

腸内環境を整える方法

健康的な腸内環境を維持し、便秘を予防・改善するためには、以下の方法が効果的です:

  1. 食物繊維の摂取:
    • 推奨摂取量: 成人で1日20g以上
    • 効果: 便のかさを増やし、腸内細菌の餌となる
    • 食品例: 野菜、果物、全粒穀物、豆類
  2. プロバイオティクスの摂取:
    • 効果: 有益な腸内細菌を直接補給
    • 食品例: ヨーグルト、ケフィア、発酵食品
    • 注意点: 効果は個人差が大きいため、自分に合うものを見つけることが重要
  3. プレバイオティクスの摂取:
    • 効果: 有益な腸内細菌の成長を促進
    • 食品例: ニンニク、タマネギ、アスパラガス、バナナ(特に未熟なもの)
  4. 水分摂取:
    • 推奨量: 1日1.5〜2リットル
    • 効果: 便を軟らかくし、腸の動きを促進
  5. 規則正しい生活リズム:
    • 効果: 体内時計と腸内細菌のリズムを整える
    • 方法: 規則正しい食事時間、十分な睡眠
  6. 適度な運動:
    • 効果: 腸の蠕動運動を促進、ストレス軽減
    • 推奨: 週150分以上の中等度の有酸素運動
  7. ストレス管理:
    • 効果: 腸-脳軸を通じて腸内環境に好影響
    • 方法: 瞑想、ヨガ、十分な睡眠

便秘と腸内環境の関係を理解し、これらの方法を日常生活に取り入れることで、健康的な腸内環境を維持し、便秘の予防や改善につなげることができます。ただし、慢性的な便秘や急激な症状の変化がある場合は、医療機関での診察を受けることが重要です。

  1. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 日本消化管学会.
  2. Koh A, et al. Cell Host Microbe. 2016;20(6):779-784.
  3. Bischoff SC, et al. BMC Gastroenterol. 2014;14:189.
  4. Belkaid Y, Hand TW. Cell. 2014;157(1):121-141.
  5. Yano JM, et al. Cell. 2015;161(2):264-276.
  6. Dietary Reference Intakes for Japanese (2020). Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan.
  7. Dimidi E, et al. Am J Clin Nutr. 2014;100(4):1075-1084.
  8. Gibson GR, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017;14(8):491-502.
  9. Popkin BM, et al. Nutr Rev. 2010;68(8):439-458.
  10. Voigt RM, et al. Gastroenterology. 2019;156(5):1440-1451.
  11. Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition. U.S. Department of Health and Human Services. 2018.
  12. Mayer EA, et al. J Neurosci. 2014;34(46):15490-15496.

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8. 便秘で受診すべき症状

便秘は多くの場合、生活習慣の改善や市販薬で対処可能ですが、特定の症状が現れた場合は早急に医療機関を受診する必要があります。便秘で特に注意すべき症状について詳しく解説します。

血便

血便は、便秘に関連して発生する可能性のある重要な警告症状の一つです。

  • 症状の特徴
    • 鮮血が便に混じる、または便の表面に付着
    • 暗赤色や黒色のタール便
  • 考えられる原因
    1. 痔核(いぼ痔)
    2. 肛門裂傷
    3. 大腸ポリープ
    4. 大腸がん
    5. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
  • 受診の目安
    血便を認めた場合は、その量や頻度に関わらず、できるだけ早く消化器内科や大腸肛門科を受診することが推奨されます。特に50歳以上の方や、大腸がんの家族歴がある方は注意が必要です。

急激な体重減少

便秘に伴う急激な体重減少は、重大な疾患の可能性を示唆する症状です。

  • 症状の特徴
    • 6ヶ月以内に5%以上の体重減少
    • 食欲不振を伴うことが多い
  • 考えられる原因
    1. 大腸がん
    2. 甲状腺機能亢進症
    3. 炎症性腸疾患
    4. うつ病
  • 受診の目安
    意図しない急激な体重減少(特に3ヶ月以内に5%以上)がある場合は、速やかに内科または消化器内科を受診してください。

持続する腹痛

便秘に関連して持続する腹痛は、単なる便秘ではなく、より深刻な問題を示唆している可能性があります。

  • 症状の特徴
    • 持続的または断続的な腹痛
    • 痛みの程度が強い、または徐々に悪化する
    • 腹部膨満感を伴うことがある
  • 考えられる原因
    1. 腸閉塞
    2. 虫垂炎
    3. 大腸憩室炎
    4. 卵巣嚢腫茎捻転(女性の場合)
  • 受診の目安
    24時間以上持続する強い腹痛がある場合、または痛みが徐々に悪化する場合は、速やかに消化器内科または救急外来を受診してください。

その他の注意すべき症状

上記の主要な症状に加えて、以下の症状が便秘と併せて現れた場合も医療機関への受診を検討してください:

  1. 発熱
  2. 嘔吐
  3. 便の形状や色の急激な変化
  4. 50歳以上で新たに便秘症状が出現した場合

これらの症状は、便秘の背景にある潜在的な深刻な疾患を示唆している可能性があります。早期発見・早期治療が重要なため、これらの症状が現れた場合は迅速に医療機関を受診することが推奨されます。

便秘は一般的な症状ですが、上記のような警告症状を見逃さないことが重要です。自己判断せずに、適切な医療機関で専門的な診断を受けることで、重大な疾患の早期発見・治療につながる可能性があります。

  1. 日本消化器病学会 (2023). 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂.
  2. American Gastroenterological Association. (2013). AGA Technical Review on Constipation. Gastroenterology, 144(1), 218-238.
  3. World Gastroenterology Organisation. (2010). Constipation: A Global Perspective. World Gastroenterology Organisation Global Guidelines.
  4. National Institute for Health and Care Excellence. (2021). Constipation in adults: diagnosis and management. NICE guideline [NG12].
  5. American College of Gastroenterology. (2021). ACG Clinical Guideline: Management of Benign Anorectal Disorders. American Journal of Gastroenterology, 116(3), 514-530.

9. よくある質問(FAQ)

便秘に関する疑問や不安は多くの人が抱えています。ここでは、便秘に関するよくある質問とその回答を、最新の医学的知見に基づいて解説します。

便秘は何日続いたら病院に行くべき?

便秘の症状や程度には個人差があるため、一概に「何日続いたら」と断言することは難しいですが、以下のような目安があります:

  1. 通常の排便間隔から大きく逸脱した場合(例:毎日排便があった人が3日以上排便がない)
  2. 1週間以上排便がない場合
  3. 便秘に伴う以下の症状がある場合:
    • 強い腹痛
    • 吐き気や嘔吐
    • 発熱
    • 血便
    • 急激な体重減少

2023年に発表された「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」によると、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも種々の支障をきたしうる病態」と定義されています。このような状態が続く場合は、医療機関の受診を検討すべきです。

便秘と大腸がんの関係は?

便秘と大腸がんの関係については、長年議論されてきましたが、最新の研究では両者の直接的な因果関係は明確ではありません。国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)によると、便通の頻度と大腸がんリスクとの間に明確な関連は見られませんでした。週2-3回の排便しかない人でも、毎日排便がある人と比べて大腸がんのリスクが高くなることはありませんでした。ただし、以下の点に注意が必要です:

  1. 急激な便秘症状の悪化
  2. 便の形状や色の変化
  3. 血便
  4. 原因不明の体重減少

これらの症状が見られる場合は、大腸がんの可能性も考慮して医療機関を受診すべきです。

妊娠中の便秘対策は?

妊娠中は、ホルモンの変化や子宮の拡大による腸への圧迫などにより、便秘になりやすくなります。2023年の「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」に基づき、妊娠中の便秘対策として以下が推奨されています:

  1. 食事療法:
    • 食物繊維の摂取増加(1日20-25g)
    • 水分摂取の増加(1日1.5-2L)
    • プロバイオティクス・プレバイオティクスの摂取
  2. 運動療法:
    • 適度な運動(ウォーキングなど)
    • 骨盤底筋体操
  3. 生活習慣の改善:
    • 規則正しい排便習慣の確立
    • ストレス管理
  4. 薬物療法:
    • 医師の指示のもと、妊娠中に安全な緩下剤の使用(酸化マグネシウムなど)

妊娠中の便秘は胎児に直接的な悪影響を与えることは少ないですが、母体の不快感やストレスの原因となるため、適切な対策が重要です。ただし、薬物療法を行う場合は必ず医師の指示に従ってください。

  1. 日本消化器病学会 (2023). 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂.
  2. 国立がん研究センター (2006). 便通、便の状態と大腸がん罹患との関連について. 多目的コホート研究(JPHC研究).
  3. American College of Obstetricians and Gynecologists (2018). ACOG Practice Bulletin No. 199: Use of Prophylactic Antibiotics in Labor and Delivery. Obstetrics & Gynecology, 132(3), e103-e119.
  4. World Gastroenterology Organisation (2013). Constipation: a global perspective. World Gastroenterology Organisation Global Guidelines.
  5. National Institute for Health and Care Excellence (2021). Constipation in children and young people: diagnosis and management. NICE guideline [NG99].

10. まとめ:健康的な排便習慣のために

健康的な排便習慣は、全身の健康と密接に関連しています。健康的な排便習慣を維持するための重要なポイントをまとめます。

1. バランスの取れた食事

  • 食物繊維の摂取:1日20-35gの食物繊維を摂取することが推奨されています。野菜、果物、全粒穀物、豆類などを積極的に取り入れましょう。
  • 水分摂取:1日1.5-2Lの水分摂取を心がけましょう。水分は便を軟らかくし、腸管内の輸送を助けます。
  • プロバイオティクス・プレバイオティクス:腸内環境を整えるために、ヨーグルトなどの発酵食品や食物繊維が豊富な食品を取り入れましょう。

2. 規則正しい生活リズム

  • 定時排便習慣:毎日同じ時間帯にトイレに行く習慣をつけることで、体内時計と腸の動きを同期させることができます。
  • 十分な睡眠:睡眠不足は腸の動きを鈍らせる可能性があります。7-8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。

3. 適度な運動

  • 有酸素運動:週150分以上の中等度の有酸素運動が推奨されています。ウォーキング、ジョギング、水泳などが効果的です。
  • 腹筋運動:腹筋を鍛えることで、排便時の腹圧を高めることができます。

4. ストレス管理

  • リラクゼーション技法:瞑想やヨガなどのリラクゼーション技法を取り入れ、ストレスを軽減しましょう。
  • 趣味の時間:ストレス解消のために、趣味の時間を持つことも効果的です。

5. トイレ環境の整備

  • リラックスできる環境:トイレを清潔に保ち、リラックスできる環境を整えましょう。
  • 正しい姿勢:排便時は膝を高くし、前傾姿勢をとることで、より自然な排便が可能になります。

6. 便秘症状の早期認識と対応

  • 症状の観察:便の性状や排便頻度の変化に注意を払い、異常を感じたら早めに対応しましょう。
  • 適切な受診:慢性的な便秘や警告症状(血便、急激な体重減少、持続する腹痛など)がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

7. 適切な薬物使用

  • 緩下剤の適切な使用:医師の指示に従い、適切に緩下剤を使用しましょう。長期使用や乱用は避けるべきです。
  • 新しい治療薬の検討:従来の治療で効果が不十分な場合は、新しいタイプの便秘治療薬の使用を医師と相談しましょう。

健康的な排便習慣は、単に便秘を予防するだけでなく、全身の健康維持にも重要な役割を果たします。これらのポイントを日常生活に取り入れることで、長期的な健康維持につながります。ただし、個人の状態や既往歴によって適切なアプローチが異なる場合があるため、必要に応じて医療専門家に相談することをお勧めします。

  1. 日本消化器病学会 (2023). 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂.
  2. World Gastroenterology Organisation (2013). Constipation: a global perspective. World Gastroenterology Organisation Global Guidelines.
  3. American Gastroenterological Association (2013). AGA Technical Review on Constipation. Gastroenterology, 144(1), 218-238.
  4. National Institute for Health and Care Excellence (2021). Constipation in adults: diagnosis and management. NICE guideline [NG12].
  5. U.S. Department of Health and Human Services (2018). Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition.
  6. European Society of Neurogastroenterology and Motility (2019). Guidelines on the management of chronic constipation in adults. United European Gastroenterology Journal, 7(5), 548-581.

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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