Aspirinを使用している高齢者における重篤な消化管出血:ASPREE無作為化対照試験における発生率とリスクファクター

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目次

目的


アスピリンを使用している高齢者における重大な消化管出血に関する確実なデータは不足している。
大規模ランダム化比較試験のデータを用いて,発生率,危険因子,絶対危険度を算出した。

方法


70歳以上の地域在住者を対象に2010~2017年を通じて実施されたアスピリン対プラセボの一次予防試験(「ASPirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)」,n=19 114)から、データを抽出した。
臨床的特徴は、ベースライン時および毎年収集された。
エンドポイントは輸血、入院、手術、死亡に至った消化管出血とし、試験群に盲検化された2名の医師が独立に判定した。

結果


中央値4.7年(88 389人年)の追跡期間中に、上部消化管出血が137件(アスピリン群89件、プラセボ群48件、HR 1.87、95%CI 1.32~2.66、p<0.01)、下部消化管出血が127件(アスピリン群73件、プラセボ群54件、HR 1.36、95%CI 0.96~1.94、p=0.08)あり、全体で60%出血量が増加していることが示された。
プラセボ群では致死的な出血が2例あった。
多変量解析では、年齢、喫煙、高血圧、慢性腎臓病、肥満が出血のリスクを高めることが示された。
出血の5年絶対リスクは、アスピリンを服用していない70歳では0.25%(95%CI 0.16%~0.37% )、アスピリンを服用している80歳で、さらに危険因子がある場合は最大5.03%(同 2.56%~8.73% )であった。

結論


アスピリンは消化管出血のリスクを60%増加させる。
しかし、重篤な出血の5年絶対リスクは、若くて健康な人においては、それほど高くない。
これらのデータは、患者および臨床医がアスピリンの予防的使用について十分な情報を得た上で決定するのに役立つと思われる。


感想


やはりアスピリンを使用している高齢者は消化管出血が多いですね。昔は高齢のアスピリン内服内服患者に予防的PPIを処方してくれる非消化器科医は少なく、しばしば消化管出血が起きていました。しかし最近では非消化器科の医師の間でも、かなり予防的にPPIを併せて処方してくれることが増えて消化管出血が減りました。

論文


Mahady SE, et al: Major GI bleeding in older persons using aspirin: incidence and risk factors in the ASPREE randomised controlled trial. Gut. 2021 Apr;70(4):717-724. doi: 10.1136/gutjnl-2020-321585. Epub 2020 Aug 3.

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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