高齢者胃癌患者における腹腔鏡下胃切除術後の術後せん妄のリスク因子とノモグラムモデルの検討

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目次

背景


高齢者胃癌患者における腹腔鏡下胃切除術後の術後せん妄(POD)の危険因子を評価し、予測モデルを構築すること。

方法


腹腔鏡下胃切除術を受けた高齢のGC患者を登録し、術後7日以内のPODの発現状況に基づいてグループ分けした。
単変量および多変量ロジスティック回帰分析により独立した危険因子を抽出し、ノモグラム予測モデルに登録した。

結果


高齢者GC患者270名が登録され、術後7日以内に74名(27.4%)にPODが発生した。
多変量回帰分析の結果、年齢(OR: 3.30, 95% CI: 1.41-6.85, P < 0.001), 睡眠薬(OR: 1.87, 95% CI: 1.12-3.09, P = 0.012), ICU滞在期間(OR: 1.55, 95% CI: 1.02-2.37, P = 0.029), アルブミン/フィブリノゲン比(AFR)(OR:1.74、95%CI:1.03-2.76、P = 0.019)、好中球/リンパ球比(NLR)(OR:2.12、95%CI:1.11-4.01、P = 0.016)が高齢GC患者のPODに関する5つの独立危険因子であった。
これら5つの因子に基づいて構築されたノモグラムモデルのAUCは0.807であった。

結論


本研究により、年齢、AFR、NLR、睡眠薬の服用、およびICU滞在期間がPODの独立したリスク因子であることが明らかとなり、これらの因子に基づくノモグラムモデルにより高齢のGC患者のPODを効果的に予測できると考えられた。

感想


体感的には男性患者の方がせん妄になりやすいと感じていましたが、本研究では男性はリスク因子となっていませんでした。ただしデータを見たところ、せん妄になった患者およびならなかった患者の絶対数はともに男性が女性の2倍でした。男性の方がせん妄になりやすいという私の感覚は絶対数から来ていたようです。
Limitationとしては、睡眠薬の使用もリスク因子に上がっていたものの、睡眠薬の種類の記載がありませんでした。確かにベンゾジアゼピン系であればリスク因子となると考えられますが、最近の睡眠薬であるオレキシン受容体拮抗剤ならばせん妄にはなりにくいと考えられます。
また併存疾患の記載もありませんでした。糖尿病薬、降圧薬使用の有無の記載はあり、これらにより糖尿病と高血圧に関しては分かりますが、その他の併存疾患の有無は不明です。特に脳血管疾患や認知症の既往があったかは重要だと思います。

出典


Chen J, et al: Risk factors and a nomogram model for postoperative delirium in elderly gastric cancer patients after laparoscopic gastrectomy
World J Surg Oncol. 2022 Sep 29;20(1):319. doi: 10.1186/s12957-022-02793-x.PMID: 36171580

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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