高齢者胃癌患者の早期死亡の予測モデル

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背景


高齢化社会の到来により、胃癌患者の平均年齢が上昇している。身体状態の悪い高齢のGC患者は、治療経過中に合併症を発症しやすく、早期死亡の原因となる。
本研究では、高齢の胃癌患者における総早期死亡および癌特異的早期死亡を予測するための危険因子を同定し、ノモグラムを確立することを目的とした。

方法


高齢のGC患者のデータは、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから抽出した。これらの患者を訓練コホートと検証コホートに無作為に割り付けた。
早期死亡の独立した危険因子を特定するために、単変量ロジスティック回帰モデルおよびバックワードステップワイズロジスティック回帰モデルを使用した。
早期死亡の全リスクを予測するためにノモグラムを構築し、その性能は訓練コホートと検証コホートの両方において、受信者動作特性(ROC)曲線、検量線、決定曲線分析(DCA)、統合識別改善(IDI)、純再分類改善(NRI)により検証された。

結果


登録された3102人の患者のうち、1114人が最初の診断から3カ月以内に死亡し、そのうち956人ががん特有の原因で死亡した。
非アジア人または太平洋諸島民人種、非噴門/胃底部または小弯/大弯、高いAJCCステージ、手術なし、化学療法なしは、全死因早期死亡および癌特異的早期死亡の両方の高いリスクと関連していた。
T期の高さとN0期は早期総死亡にのみ正の相関があり、肝転移は癌特異的早期死亡率にのみ正の相関があった。
これらの同定された因子に基づき、全死亡および癌特異的早期死亡のリスクを予測するための2つのノモグラムが開発され、ノモグラムのAUCはそれぞれ0.775および0.766で良好な性能を示した。また、検量線、DCA、NRI、IDIにより、これらのノモグラムの有用性が確認された。

結論


これらのノモグラムモデルは、高齢のGC患者の早期死亡を特定し、より個別化された治療戦略を提供するための実用的なツールであると考えられた。

感想


手術なし、化学療法なしは、全死因早期死亡および癌特異的早期死亡の両方の高いリスクとありますが、Limitationにも記載があるようにPSや併存疾患のデータが無いため、手術なし、化学療法なしの患者達は、PSや併存疾患によりこれらの治療ができなかったと考えられます。
SEERのデータベースに今後これらの因子が記載され、より正確な予後予測モデルができることを期待します。

論文


Yang W, et al: A predictive model for early death in elderly patients with gastric cancer: A population-based study
Front Oncol. 2022 Aug 22;12:972639. doi: 10.3389/fonc.2022.972639. eCollection 2022.

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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