ニボルマブによる治療を受けた上部消化管癌患者の免疫関連有害事象と予後

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目次

背景


免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、上部消化管癌(食道癌、胃癌)の治療薬として使用されることが多くなってきている。ICIは免疫寛容のバランスを崩し、免疫関連有害事象(irAE)を引き起こす。一部の癌ではirAEsがICIの有効性と関連することが報告されているが、上部消化管癌のirAEsと予後との関連は不明である。
本研究では、ニボルマブによる治療を受けた進行・再発上部消化管がん患者を対象に、irAEの予後への影響について検討することを目的とした。

方法


CTCAE ver5.0に従い、ニボルマブ投与患者(n=96)をレトロスペクティブにirAEs群(n=41)と非irAEs群(n=55)に分類した。

結果


irAEsは良好なPSおよび血清Alb高値と有意に関連していた(いずれもP<0.05)。irAEs群は非irAEs群に比べ全生存期間(OS)が有意に長かった[log-rank P=0.003;単変量ハザード比(HR)=0.36、95%信頼区間(CI)=0.21-0.65、P<0.01;多変量HR=0.47、95% CI =0.26-0.88、P=0.018]。
重要なことは食道癌と胃癌のいずれにおいてもirAEs群は非irAEs群に比べ良好な臨床転帰を示したことである。
多変量解析では、男性(P<0.01)、irAEsの存在(P=0.018)、治療前の良好なPS(P<0.01)が独立した予後因子であった。

結論


ニボルマブによる治療を受けた上部消化管癌患者のうち、irAEを発症した患者の予後は、irAEを発症しなかった患者の予後よりも良好であった。irAEの早期発見とirAEに対する適切な対応によるニボルマブの長期継続投与が重要である。

感想


悪性黒色腫や肺癌ではirAEが良好な予後と相関することが報告されていますが、上部消化管癌の場合にも同様な関係があるか調べた論文です。結果はきれいにirAEの発現は良好なOS, PFSと相関していました。かつ食道癌と胃癌それぞれで見てもこの結果は認められました。
そしてirAEの発現は良好なPSと相関していたため、PSが良好な早期にICIを投与することが重要であること記載されていました。この結果は1st lineでのNivo併用を後押しするものと考えられました。

出典


Hara Y, et al; Immune-related adverse events and prognosis in patients with upper gastrointestinal cancer treated with nivolumab.
J Gastrointest Oncol. 2022 Dec;13(6):2779-2788. doi: 10.21037/jgo-22-281.PMID: 36636073

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この記事を書いた人

卒後15年超の消化器内科医です。
卒後は様々な市中病院で研鑽を積み,現在に至ります。

専門は早期がんの内視鏡治療,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の診療,消化器がんの化学療法(抗がん剤治療)です。消化器病学会専門医,消化器内視鏡学会専門医,総合内科専門医を所持しています。

このブログでは,一般の方向けの消化器疾患の説明と,消化器レジデント向けの論文の紹介をしています。

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